化け石
2020年9月10日
ある時、人身御供にされそうになった娘の家から、しくしく泣く声がしたんだと。通りかかった武士がそのわけを聞いて、村人の難儀を取り除いてヤッペと思ったんだと。
そして、娘の代わりに境内に行って身を潜め、化け物が出はってくるのを待ち構えていたんだと。しばらく待ってたらば、無気味に光る化け物があらわれたんだと。その光に向かって武士は一刀両断切り捨てたんだと。手応えはあったんだげんと、あたりは真っ暗でなんも見えなかったんだとっしゃ。
切り捨てたはずの化け物の姿を探したげんとも、どこさもなかったんだと。そしてあたりをよーぐ見てみたら、*板碑の石が、なんと真っ二つに割れてたんだと。
それ以来、化け物はまったく現れなくなったんだどしゃ。
「あの化け物は、板碑だったんだべか」ってみんなで話したんだと。
今でもその石を土地の人は『化け石』って呼んでるんだとっしゃ。うそだと思うんなら、行ってみさいん。
はい、こんでおわり。
※板碑 : 「供養の碑」 梵語・古代インドの文語であるサンスクリット。仏教用語に使われている。
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