「今」を生きる—震災から10年、今こそ聞きたい言葉
2020年12月28日
『「今」を生きるー震災から10年、今こそ聞きたい言葉』終了しました
2021年3月27日
第1回講話「生と死をつなぐーいのちのゆくえー」講師:栗原市普門寺副住職 髙橋悦堂氏
私たちが亡くなった方を祈るだけでなく、先に逝った方も我々のことを想って祈ってくれている。死は生きている人と亡くなられた方との間に新しいつながりを生み出すもの。いのちのゆくえは自分が納得する形で自由に想像して良いのだとのお話に、受講生は自らの「いのち」について深く考察する機会を得た。コロナ禍で人の心の苦しみや悲しみが顕かになった今こそ、慈しみの心、慈悲が必要と教わった。
講師は臨床宗教師として終末期の患者さんに寄り添う活動のほか、東北自死・自殺相談センターの代表としても多くの方と関わっている。
第2回講話「それでも、生きていく」講師:東松島市役所 佐藤伸寿氏
講座に先立ち、1月末に受講生へ東松島市の概要・取り組みなどの資料とともに事前アンケートを送付した。自分は今幸せかとの質問も含まれるアンケートに記名式で答えるという難題の前にもひるまず、多くの受講生が誠実に回答してくださった。講話では被災直後の凄惨な状況において命がけで闘った公務員の姿に圧倒された。今日死ぬかもしれないと何度も思ったそうだ。震災直後に国内外からさまざまな支援の手が差し伸べられるとともに、早期に理想とする未来都市に向けて計画を策定し、現在も前進を続ける自治体の姿を知ることができた。受講生のアンケート集計から導かれた詳細な分析結果も目を見張るものがあり、驚きの連続だった。講座終了後、受講生から「みんなで一緒に東松島市に行きたい」との提案も出された。
第3回講話「いま、語り継ぐこと」講師:民話採訪者 小野和子氏
講師の小野和子さんは、これまで50年の長きにわたり東北各地の民話を乞うてきた。2019年12月に刊行された「あいたくてききたくて旅にでる」はその集大成でもある。民話は民の話、と小野さんは語る。民話はただの昔話にとどまらない。辛く悲しい出来事を語るのもまた民話であろう。小野さんはみやぎ民話の会の顧問として2011年8月に南三陸町で「民話の学校」を開催している。奥様が朝いってらっしゃいと手を振るように笑みさえ浮かべ流されて行ったと語る人、避難していた自宅の2階部分がノアの箱舟のように流されたとき夫は何の役にも立たなかったと語る人、普段民話を語る語り手の話はどこか客観的で面白味さえあったそうだ。また、小野さんの元には福島県双葉町から逃れ逃れてきた方もやってきた。その体験記をまとめる作業にも小野さんは関わっている。小野さんは「語ってもらえる人」なのである。語ることはその人自身を励ます力があるという。私たち一人一人が生きてきた証に一つでも残す。それをどの人もやるならば、この世の中の出来事を次の世代に残していけるのではないか。小野さんの言葉は深く、そして優しい。
「今こそ聞きたい言葉」は、講師のお話の中に、そして受講生おひとりおひとりのアンケートの中に、ありました。
素敵な言葉をたくさん頂戴し、本当にありがとうございました。
この世にお別れをするまで、「今」を生きましょう。
あの世に行っても、つながっていましょうね。
またお会いできるその日まで。どうぞ皆さんお元気で。
ここまでが本文です。