真美沢公園の四季 第八回 ヒメコウゾ
2022年7月24日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第八回 ヒメコウゾ
木苺に似た赤い実はねっとりと甘く野鳥の大好物
英名:無し
本州の岩手県以南から四国、九州にいたる丘陵から低い山地の林縁や道端、荒れ地に普通に生え、高さ2〜5mになる低木落葉広葉樹です。その理由は、野鳥がタネをあちこちに運ぶため。樹皮は暗褐色で縦に縞模様が入っており、狭楕円形の皮目が目立つので探す目当てになります。ヒメコウゾの枝はシュート(シュート…元の茎の分枝から始まる新たな茎と側枝がややつる状によくのびることを指します)状に細くよく分岐して伸びます。最初に6月、黒松口から入って階段を下りる周りで濃い赤橙から赤く熟する前の様子(右)で発見しました。
コウゾと名がついていることから、和紙の原料と気づかれる方もおられるはず。和紙の三大原料として知られている三種類の樹は「コウゾ」「ツマタ」「ガンピ」で、そのうちのコウゾは、このヒメコウゾとカジノキが人工交配されて良質な和紙の原料として採取された歴史があります。そのコウゾとヒメコウゾは区別して紹介します。
ヒメコウゾの花は4~5月に葉の展開と前後して開花します。とはいってもこれが花とは知らないと気づかれないはず。写真のように独特の形状をしています。新枝の基部の葉腋に雌雄ともに着く雌雄同株で、雌雄異花となります。雄花序は新枝の下部の葉腋に数個、上部の葉腋に1個の雌花序をつけます。
雄花序は長さ約1cmの柄があり、直径約1cmの球形。花を咲かす前の花芽の様子は濃紫色でごつごつとした感じです。開花前の左の様子を見るとこれ何の植物???と思われるはず。そのあと7日ほどして右側のように開花します。白い細かな集合花が咲きます。枝を揺らすと細かな花粉が白く漂いました。別の株の雌花に流れていくといった工夫だと感じました。雌花が雄花の上に咲いているのは、雌雄同株で、雌雄異花の植物にほぼ共通される、同じ株の花からの受粉を避けてより強い種を子孫に残そうといった試みと思われます。
雌花序は柄が短く、直径約4~5mmの球形で、赤紫色の花柱が目立つ。まるでウニのような形状なのがユニークです。暗紫色の長い毛は花柱で長さ約5~6mmで、受粉後はその色も針もやがて取れて緑色の球形のみになります。
7月初頃、1〜1.5cmほどの球形の集合果が赤橙から赤色に透明感をもって実っている様子を一枚目に載せました。近くで観ると木イチゴ類の実と似ていますが、あのウニの針のような雌花の時の針はもう落ちてありません。小さな粒粒が陽差しを受けて透けるよう観えました。液果で、粒粒の個々の果実は核果で核があります。手に取るときに表面の皮が薄くて、すぐに中の液が手に着きます。果液は粘り、糸を引く感じで「えっ」と小さな驚きでしたが、口に入れてみました。甘くて食べられます。食用のイチゴのような酸味はありませんでした。ゼリー状の食感があるのが特徴でしょうか。核果の粒粒のそれぞれに入っている1mm程の大きさの種子のざらつきはいたし方ないか…。
それはきっと、人間がたくさん食べられるような果物としてではない…からです。でも野鳥が大好物の実です。野鳥の助けを借りて、種子のみ糞で広がっていく動物散布で生域を広げていきます。記事掲載の頃には、野鳥が実を食べつくしていることでしょう。
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