真美沢公園の四季 第七十二回 コブシ
2023年10月15日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第七十二回 コブシ
ごつごつとコブシのような集合果、熟して裂けても種子はひもでつながり野鳥を誘う
英名:Kobushi magnolia
コブシは、北海道〜九州の丘陵、山地に生える落葉高木です。通常見かけるものは5~10mほどですが、条件が整えば高さ15m以上になります。生長は比較的速く、樹形は枝も均整に出て整った円錐形から卵形の樹形になります。早春に、葉が展開する前に他の木々に先駆けて白い大きな花をつけます。3月に下旬にカワヅザクラと競うように咲いていました。
コブシは別名、「田打ち桜」とも呼ばれ、田んぼの神様の依り代として大切にされてきた歴史があります。その土地その土地で違いはあるようですが、コブシが咲くころに田植えを始めたり、野菜の植え付け、みそ・しょうゆの仕込みに取りかかかったとも言われています。花の向きから豊作になるかどうかを占ったりもしていたそうですよ。記事を書こうと学んでいくと、いかにコブシが田園風景の中で成長し、農家の人々と深く寄り添ってきた花であるかということをうかがい知ることができます。真美沢公園でも、真美沢堤の周りに生長していることから、水田のため池の様子を観るときにコブシを見て占っていたのかなと想像しました。
葉は秋になると黄葉します。暑い地域ほどきれいに黄葉しないとも言われています。
花を支える萼片は3個で小さく、花の基部に2枚の葉をつけるのが特徴で、同時期に咲かすモクレンやタムシバと区別できます。白い花びらを広げるように枝いっぱいに芳香のある花を咲かせます。まだ風が冷たい季節に、色んな人々の思いを背負って野山に一斉に花を咲かせるコブシ。その姿は、花びらがばらばらと色んな方向を向いて咲くからなのか、ひとつひとつの花が小さな意志をもって、大空に向かって伸び伸びと6枚の花弁をいっぱいに広げているようにも見えます。
それは、次世代に向けてのコブシの戦略なのでしょう。多くの花は花弁の底に蜜をためて、それめがけてハチなどを誘います。でもコブシは蜜ではなく香りを出して誘います。様々な方向に顔を向けて、特定の虫媒花ではなく、より多くの甲虫や蜂などを誘って受粉を誘っているのです。
9~10月に熟してゆくに従い袋果の心皮が裂開し、中から丸々と熟した赤色の種子が顔を出す。その様は、名前の由来にもあるように、手を握り締めた拳のように観えることから名前がついています。さらに心皮が裂開してゆくと、赤い種子は、白い糸でつながり、つり下がっている様を見せます。甘みもなく抹香くさいとのことで、油分をたくさん含むことから、カラスがよくきてついばんでいます。
その赤色の種皮を取り除くと黒色の固い種子が姿を現します。丸というよりも、平べったいハート型というか、そらまめのような形状です。非常に硬く、寿命が長く、適した環境になるまで種子のままでいるという。
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