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更新日:2025年3月25日
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「化け石」
化け石
むかーしむかしな、高田八幡神社の参道に怪しげな光を放つ化け物が夜な夜な現れて、参拝者や近隣の人たちを困らせてたんだと。おっかなくて、誰もお参りすることができなかったんだと。神社のあたりを通ると、食べ物を奪われたり、娘がさらわれたり、赤ん坊が喰われたりしたとかしないとか、とにかくおっかなくてみんなうんとがおってしまったんだとっしゃ。
ある時、人身御供にされそうになった娘の家から、しくしく泣く声がしたんだと。通りかかった武士がそのわけを聞いて、村人の難儀を取り除いてヤッペと思ったんだと。
そして、娘の代わりに境内に行って身を潜め、化け物が出はってくるのを待ち構えていたんだと。しばらく待ってたらば、無気味に光る化け物があらわれたんだと。その光に向かって武士は一刀両断切り捨てたんだと。手応えはあったんだげんと、あたりは真っ暗でなんも見えなかったんだとっしゃ。
しーんと静まり返った暗闇の中で、化け物がまた出はってくっかもししゃねぇと思って、武士は息を殺して微動だにしなねで、よっぴて身を潜めてたんだと。
そのうち、あたりがうっすら明るくなって夜が明けてきたんだと。
切り捨てたはずの化け物の姿を探したげんとも、どこさもなかったんだと。そしてあたりをよーぐ見てみたら、*板碑いたびの石が、なんと真っ二つに割れてたんだと。
それ以来、化け物はまったく現れなくなったんだどしゃ。
「あの化け物は、板碑だったんだべか」ってみんなで話したんだと。
今でもその石を土地の人は『化け石』って呼んでるんだとっしゃ。うそだと思うんなら、行ってみさいん。
はい、こんでおわり。
※板碑いたび:「供養の碑」梵語ぼんご・古代インドの文語であるサンスクリット。仏教用語に使われている。