第八回 シュロ ワシュロ
2024年6月9日
高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。
高森東公園・修景公園の四季 第八回 シュロ ワシュロ
日本原産で東北でも育つシュロ 野鳥が種を運び里山林内にもぽつりぽつりと育つ
英名:Chusan Palm, Windmill Palm
ワシュロは、雌雄異株で、高さ3~7m、年数が経てば10mを超えることも、幹径10~15cmになる常緑高木です。日本を原産とする数少ないヤシ科植物の一つで、かつて九州南部に自生し、他の樹木にない南国風の雰囲気を持つことから、明治時代以降、関東地方以西の洋風庭園を中心に植栽されるようになると「エキゾティックな庭木」「ヤシみたいな木」として人気が出て広がり、それを鳥によって種子をほうぼうに運ばれ、公園や里山の林縁などを中心に野生状態で生え増えています。
ワシュロは、暑さ寒さに強く東北地方でも育てられるとのこと。かつての我が家の向かいでも、玄関前に二階の屋根を超えるかに育ったワシュロが立っていました。ヤシ科の中でも、最も耐寒性があるとのこと。さらに乾燥、湿気に強く、土質を選ばずに育ち、成長は遅いとも記されていました。
一般に「シュロ」という場合、本種と中国原産とされるトウジュロ(唐棕櫚)を区別せずに表しますが、見た目でもはっきりとした違いがありますので、ワジュロとして書きます。
ワシュロに限らずシュロは「南国のエキゾティックな雰囲気」を醸し出してくれます。その要因は、幹は分岐せず真っすぐに伸び、枝もない。その幹の頂部に生じる葉は扇状円形、径50〜80cmになり、何枚もの細長い小葉が集まって観せてくれます。扇子の骨組みのような放射状の形状をした葉全体で1枚の葉とみなします。葉柄は長さ60~100cmで、小葉の幅4~5cm、縁に刺状の突起があります。小葉は古くなると先端部分が折れて垂れ下がる様子が、南国を演出します。
ワジュロとトウジュロの違いは、ワシュロは葉の付け根にある葉柄が長く、葉の先端がだらしなく垂れ下がるが、トウジュロ(唐棕櫚)は葉柄が短く、葉が上方へ切立ってすっきりとした印象になります。
このワシュロの葉に限らずシュロの葉は頑丈で、さまざまな用途で使用されます。代表的なものに「シュロほうき」があります。シュロのほうきは、竹や他の材木などを柄にして先端にシュロの葉を何枚か捲き付け、そしてツルなどで結びとめたものです。さらに、ハエタタキなどの先端部分にも、シュロの葉を編みこんだものが使用されます。観たことないとの声が聞こえそうです。昔はプラスチック樹脂などが一般に普及していなかったので、このような素朴な素材を有効に活用したほうきやハエタタキなどは、生活の必需品でした。
シュロの花は、雌雄異株、雄花と雌花は別々の木に咲きます。どちらも見た目ほぼ同じ姿をしており、直径3mmほどの花が密集しいて豪華です。花被片は6枚です。大きなものと小さなのがあって、3枚と間違えそうです。違いは雄花にはおしべが5~6本だけ、雌花にはめしべが1本だけ、雌花の咲く雌花序の中には両性花も混じっているという。それぞれには・・・
雄花(左)のある雄花序は見た目カズノコが集まっているかの様なボリューム感があり、おしべが5~6本と、奥に3個の退化雌しべが観えるとのこと。
雌花(右)のある雌花序は黄色ですが色は雄花に比べると白っぽい感じで、さらに房は小さめでまばらについている感じとなります。両性花には3本の花柱の先にそれぞれに雌しべと、6個の退化雄しべが観え、雌花には一つの雌しべが観えるとのことです。
ワシュロの果実は、開花後には徐々に実をつけていき、その半年後の冬になるまでに果実を少しずつ成熟させます。果実は液果で、形は扁球形、長さ10〜12mm、幅6〜9mm、緑黒色から、11月には黒紫色に熟します。ボリューム感のある花序であることから、果実の量も半端なく、野鳥が集っては食し、種を糞とともにいずれかに落としてくれます。
ワシュロの実は、一般的に知られているようなヤシの実と同じように人は食べられないとのこと。ただ、果実自体にはわずかに甘みがありでんぷん質の味わいがあるといいます。しかし、基本的に食用には適さないとのことです。
シュロというと思い浮かぶのは、皮をはいで作っているシュロ紐です。シュロの皮の真骨頂はあくまでもその頑丈な繊維質で雨風にも強いこと。幹を保護するように皮が複数枚巻きつく形で結合しているので、丁寧に剥いでいくと、採取ができて、間を置けば何回でも収穫できるのだそうです。この皮をはいだシュロでの手製の小さな箒、高価なものですが売っていますよ。腕に自信のある方は作ってみませんか。
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