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更新日:2025年3月25日
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高森東公園・修景公園の四季 第二十七回 ヌスビトハギ
高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。
その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。
高森東公園・修景公園の四季 第二十七回 ヌスビトハギ
果実はブラジャーが乾してあるかのように並び マジックテープのように面でくっついて散布
英名:なし
ヌスビトハギは、マメ科の多年草で、日本全土の平地から山地の草地や丘陵地などの、林縁や路傍など、散策路やハイキングコースなどに生えています。草丈は高さ0.6〜1.2mと、1mを超える大型の野草で葉も豊かだが、丈はあるも斜めに伸びるなどしまとまり感はありません(上の写真)。さらに、長く伸びた茎に付く花は、茎の上部に点々とまばらにつく総状花序で、かなり小さいことも手伝って、意識しないと見つけられない野草でもあります。
名前はかなりユニークですね。マメ科ハギの仲間から、小さくとも可憐な花なのだと思わせますが、「盗人」の名をもらっています。その由来は、果実(節のある果実が連なるので…節果)の連なりがつま先歩きをした盗人の足跡に似ているためとのことです。古来盗人は足音を立てないように、地下足袋をはきつま先だけで音を立てないように歩いていました。地面に残されたつま先の足跡だけが、盗人に入られた形跡となります。その足跡が、節果の形に似ているからが定説とのことです。さらに、その節果は、俗称の「ひっつき虫」の一つで、気づかないうちに衣服にくっついている様を、まるで盗人のようだとの発想で付いたとのことです。
茎は細くて硬く、茎の根もとはやや木質化してさらに硬いです。株立ちになって立ち上がり、茎の下の方でややまばらに葉をつけます。托葉は針状披針形。本葉は長い葉柄の先に三枚の小葉がつく三出複葉です。頂小葉だけにはっきりした柄がある姿から、3枚の葉で一枚の“羽状複葉”である証拠との解説もありました。頂小葉は長さ4〜8cm、幅2.5〜4cmの卵形〜長卵形となり、側小葉は一回り小さく見えます。葉裏は淡緑色で、網状脈が目立ちます。
ヌスビトハギの開花時期は早いものであると7月下旬から8月。9月上旬にかけて、見頃となります。名前にハギとありますようにハギの特徴となる蝶形花です。花期は7~9月上旬で花は薄紅色で長さは3~4ミリと小さいです。茎の先端の方から数個の細長い総状花序に10個前後とたくさん咲くため、幾株もあると、花の時期にはよく目立ちます。マメ科特有の目立つ旗弁と二枚貝のような2枚の竜骨弁に2枚の翼弁が挟む姿はそのままに、ミヤギノハギやヤマハギ比べると何とも…。花が小さくかわいい花だけに似つかわしくないその名前がなんとも心地悪いです。
咲いたばかりの若い花ほど赤みが強いと感じました。受粉する際の次世代への戦略は、花軸上にまばらながらもいくつも花をつけて、それも目立つ赤紫色に発色して昆虫を誘います。
二つ目の戦略は、ターゲットは小さな蝶形花に潜れる小型のハナバチです。蜜を吸いにゆく際に、2枚の竜骨弁に2枚の翼弁が挟んでいる隙間に進入路があり、そこに潜り込んで蜜を吸いに来ようとします。ヌスビトハギの雄しべは9本が合着していて、1本が別になっています。雌しべはこの9本の合着した雄しべに包まれています。虫は無理くり蜜を求めて小さな花の奥に頭から突っ込んでゆき、閉じられた花を開く際に、虫の体に雄しべがついて、次の花に行って受粉するといった仕組みです。9本の合着した雄しべは花粉をハナバチの体に預けて、次の花へ着くと、蜜を吸う際に包まれている雌しべに受粉するつくりになっているとのことです。左下の花はハチが来て花粉の付着が終わって、花弁が開ききっている様子です。右上の写真でも一輪同じ様の花弁が観られますが、比べて開ききっているように観えます。
9月には、総状花序の花と、先に咲いた花の実が熟し、節果(次の項で解説)となった姿とが同時に見られます。初秋の訪れを密かに告げてくれる植物です。
節果(さやのような姿)には長さ1〜3mmの柄があり、ふつう2個の小節果で一組となり、まるでブラジャーがいくつも干しているかのようにみえます。個々の節に一個の種が熟します。節果の側面には赤褐色の斑紋があることが多いです。また、その表面は触れるとざらつくが、ルーペで覗くと、表面には細かな鉤状の針が並んでいるためで、これによって衣服などによくくっついてくる。言わば面ファスナー方式或いはマジックテープ方式のひっつき虫です。それも高性能の保持力を持ったマジックテープです。
ヌスビトハギは知らなくても、ひざ上程に草が生い茂った林縁を歩いて散策した後でふとズボンを見やると、愛犬を遊ばせた後でからだ全体にと、この節果がびっしりくっついていて面倒なことになった経験がある方も少なくないと思います。ヌスビトハギにとっては、貼りついた相手と一緒に旅に出て移動し、落ちる際に、その偶然性に賭けていて、良い土地ならまた芽吹いて広がってゆくといったねらいです。