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更新日:2025年3月25日

泉区 センタートップ

高森市民センター

〒981-3203 仙台市泉区高森6-1-2
電話番号: 022-378-9950 
休館日:月曜日、祝日の翌日、年末年始

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高森東公園・修景公園の四季 第三十回 オケラ

高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。

その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。

高森東公園・修景公園の四季 第三十回 オケラ

頭花は魚の骨のような針状の苞葉に囲まれる

英名:Japanese atractylodes

日本の本州・四国・九州の平地から低山にかけて、日当たりと水はけがよい山野や野原、丘陵地に生え、草原や明るい林中、雑木林の林縁に草丈は30~100cm程になる多年草です。横に這う太く短い根茎をもち、根茎には節がありごつごつしています。春になると根茎から芽を出して、芽生えの上方の葉は筒状に巻いて立ち、下側から順に開いていきます。全体に白い軟毛があり、特に春の芽だしのころが目立つといいます。

私は知りませんでしたが「山でうまいはオケラにトトキ(ツリガネニンジンの別名)」と里謡で歌われるほど、里人らにはなじみの山菜といわれます。若菜を食用に、根を正月の御屠蘇に使うことで知られているとのこと。そんなにうまいのなら…春になったら里山の恵みをいただこうとも思いましたが、様々に調べて学んでいくと残念ながら東北地方、特に東北北部では希少で、食用はおろか保護が必要な植物とのこと。見守ることにしました。高森東公園、修景公園では、木陰で10~20cmの低い丈であちこちに咲いています。

葉は互生して、上部の葉はときに分裂しないで葉柄が短く卵形から広楕円形、下部の葉は長い葉柄がついて3枚ないし5枚の小葉からなる羽状複葉になります。5枚の複葉の容姿が、3枚複葉の後に少し離れて2枚がついているのが観られました。葉身は革質でややかたく、葉縁にはノギとよばれる細かいトゲ状の鋸歯が観られます。

春は葉も柔らかく食べれらますが、夏にかけて固くなり、茎は根のほうが木質化するほど堅くなります。撮影は秋でしたが、茎の下部のほうが木質化しているのも確認できました。

花期は9月~10月で、径2cmのアザミに似た筒状花だけの房状の頭状花序を茎頂に白色または淡紅紫色で目立つ花をつけます。左上はつぼみです。雌雄異株で雄しべと雌しべの両方を持つ両性株と、雌しべだけが機能する雌株があります。このオケラの最大の特徴は花の姿で、褐色の羽状に分裂する魚の骨のような形となる針状の苞葉に囲まれていることです。真美沢公園で発見した際は、この魚の骨なる苞葉には気づきませんでした。調べてそれを知り、何度も通って観察しました。生で観ると感動でした。

発見したのは両性花の株でした。下の3枚の写真、左は両性花の雄性期の時、中央は両性花の雌性期に写って雌しべが雄しべを突き出て先がカールし、受粉できる姿勢になっています。右は雌株の花となります。筒状の褐色が観られません。

オケラも虫媒花と思われ、調べてみると、「オケラの果実にはオケラミバエが寄生します」とありました。小さなハエらが受粉の役目を担っているようです。

果実は痩果です。暗褐色で、形は狭楕円形でやや平たく、果皮には長い伏毛が上向きに密生します。痩果よりも長く長さの揃った冠毛が多数つきます。冠毛が開いても、褐色の羽状に分裂する魚の骨のような形となる針状の苞葉は残っています。中右は花期を終えたばかりの写真です。下は冠毛を拡大してみました。痩果から伸びた冠毛が密生しているだけでなく、その先も斜めに細く密生した冠毛が生えていて、しっかりと風を捉えるのが分かりました。

高森東公園、修景公園を散布するとき、頭花を支える苞が奇抜というか独特な形のオケラにも眼を向けてあげてください。夏から秋にかけてなら、散策路沿いの木陰で10~20cmの低い丈でちらほらとあちこちで探せるかと。

万葉集のオケラ…万葉集の時代は「ウケラ」…を詠んだ句を紹介します。

なお、作者は不明とのこと。

  • 原文
    古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓豆奈由米
  • 詠み
    戀しけば 袖も振らむを 武蔵野の うけらが花の 色に出なゆめ
    恋しけば 袖(そで)も振らむを 武蔵野(むさしの)の うけらが花の 色に出なゆめ
  • 解説
    オケラはこれまで見てきましたように、褐色の羽状に分裂する魚の骨のような形となる針状の苞葉が花を隠すようにして咲いています。その様を模しているように、目立たず変わらない姿で咲く花として詠まれ「オケラの花のように顔色に出すな、或いは人に知られるな悟られるな」という表現で使われているとのこと。
    それを受けて、この句の意味は、『もし恋しくなったのでしたら、そっと袖を振って私のことを呼んでくだされば良いのですよ。武蔵野(むさしの)のうけらの花の様に目立ったことをしないでくださいね、けっして。』・・・とあります。

オケラを詠った句は上の句を含めて3首、いずれも巻十四に東歌として収められているとのことでした。

最後に、オケラを使った祭りは有名ですよね。きっと名前だけでも聞いたことがあるのではないでしょうか。京都の八坂神社では大晦日から元旦にかけて行われる「白朮参り(おけらまいり)」です。神前に供えた削掛と薬草のオケラをたいて邪気を払います。オケラの乾燥した茎根を縄に括り付けて火縄「吉兆縄」にします。参拝者は邪気を払ったこの火「おけら火」を吉兆縄に移して消えないようにくるくる回しながら家に持ち帰り、その火を使って雑煮を作るというもの。そうすることで新しい年の無病息災が約束されるという行事です。

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