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更新日:2025年3月25日
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高森東公園・修景公園の四季 第三十六回 ドイツトウヒ
高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。
その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。
高森東公園・修景公園の四季 第三十六回 ドイツトウヒ
クリスマスツリーの代表格、松ぼっくりも最大級、冬芽は自然の造形美
英名:Norway Spruce
ドイツトウヒは、ヨーロッパの中部~北部を原産とするマツ科の常緑針葉高木樹です。日本では、中部地方以北で、植林或いは野生化した自然林を含めポピュラーな樹木ですので、山や公園で見る機会が多いはずです。樹高30m〜50m、幹径1.5m〜2m程に生長し、他の針葉樹と同じように円錐型の樹形をつくります。樹高が10mを超えてくると、末端の小枝は下垂する傾向にあります。そのため枝垂れるような優雅な外観をつくる事があります。ご存じのように、クリスマスツリーといえばモミノキをイメージしますが、本種の方がモミノキより樹形が整いやすいため、より多く使われているそうです。
ドイツトウヒが日本へ渡来したのは明治時代中~後期で、急速に普及したのは戦時中とのこと。耐寒性が強く成長が早いため、需要が急増したスギやヒノキに代わる木材として、ヒマラヤスギと共に各地に植栽されたとのことです。
名前の由来は、ドイツの森に多い針葉樹林で、唐風のヒノキという意味合いで、ドイツトウヒと名付けられたとのことです。
ドイツトウヒの葉は、小枝を互生で螺旋状に巻くように、長さ1~3cm幅0.1cm内外の線形の硬い線形で針のような形の葉を多くつけています。ただし枝で陽の当らない面(写真中央)が観られます。葉の基部には赤黄褐色の葉枕(写真下左)があり、枝に対して陽に向けて上向きに葉が出ているのを確認できます。葉の断面はかまぼこ型のような形になります。先端に行くにつれカールしており、先はちくちくするが触れても刺さるような痛さはありません。暗緑色で光沢があり、断面はひし形で4面に薄白色の気孔線が観られます。上の下の写真は、末端の下垂する傾向の枝先に今年新芽が出たのが色の違いで分かっていただけると思います。
ドイツトウヒの花は雌雄同株で、日本では5~6月に同じ木に雌花と雄花が咲きます。左の写真でいうと、赤く観えるのが雌花で、周りで黄土色系の細長い小さく観えるのが雄花です。左上の写真は、昨年のドイツトウヒの松ぼっくりが落ちずに、春を迎えて雄花雌花と一緒にとらえた写真です。
雄花は葉腋に単生し、長さ2~2.5cm程になります。雌花(雌球花とも表現されます)は、前年枝の先端に付き、長さ4~6cm程の円柱形で、花色は最初紫紅色になり、徐々に取れてきます。右下の写真がそれで、秋には垂れて下向きになり、ドイツトウヒの松ぼっくりになってゆきます。
上の写真は、7月の様子です。すでに下に垂れているのが分かります。赤色は取れて、薄い緑色に陽の光を反射して白くも観えました。まだ実の笠の間は固く閉じて詰まっているのも確認できました。
上の写真は、春にドイツトウヒの根周りで拾ったドイツトウヒの松ぼっくりです。アカマツの松ぼっくりに比べたら5倍も6倍もの大きさになります。大きければ長さ(高さ)20cm超程になるものもあります。重なり合う松かさの一つのかさのうろこに、右下の写真のような、0.6~1.5cmの薄茶色の翼とその先の0.5cm程の濃い褐色の種子が、2枚対になって入っています。種の部分が対でくっついていたのが完熟と共に離層して写真の様になり、その頃になると、晴れて乾燥した天候の際にはカサが開きはじめ、翼に風を受けて遠くに飛ばされて、くっついている種も遠くに飛ばされてゆきます。種は翼を持って風散布で広がるのです。ちなみに…雨が降ったりして湿気があると傘は固く閉じて、次の晴れを待ちます。落ちた松ぼっくりでも実験できますよ。
なお、修景公園、高森東公園のドイツトウヒが、人の手で植林されたのか、もともと育っていた樹林を生かされたのかは分かりません。
ドイツトウヒはクリスマスツリーに使われる代表的な樹木です。その松ぼっくりもリースやアレンジメントの用途に使われ、特に秋から冬にかけ美しい装飾が施されて販売されています。でも、せっかく公園にドイツトウヒがあるのですから、オリジナルの装飾を施してみませんか。
ドイツトウヒの材は、軽くて腰が強く振動が長く続くなどの特徴があるとのことです。つまり楽器作りに適した材となります。バイオリンなどのストラディヴァリウスの響板はドイツトウヒで作られていると知りました。
最後に、上の写真の美しいバラの花のような形を見せているのは、冬芽の様子です。枝先の芽を覆っている麟片が開いたことで魅せてくれます。直径1センチにも満たない大きさです。でもこの自然の造形美には驚かされませんか。花びらのマフラーを重ね着しているかのように寒さから守っています。寒さが緩んだ3月でも観ることができます。