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更新日:2025年3月25日
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高森東公園・修景公園の四季 第四十六回カツラ
高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。
その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。
高森東公園・修景公園の四季 第四十六回 カツラ
透きとおるような新緑の葉と、キャラメルの香りで癒される
英名:Katsura tree
カツラは、北海道〜九州の山地の谷沿いに生える大木では高さ30m、直径2mに達するものもある白亜紀や古第三紀から生き延びる原始的な日本原産の落葉高木です。山間の渓流沿いの水際によく生え、新緑、黄葉ともに美しい樹です。水際に多く自生し、湿地を好む典型的な樹種で、日当たりの良い乾いた尾根ではほとんど見られません。「生きた化石」と言われるほど起源が古い樹木で、大木になると株立ちになることが多いです。樹皮は暗灰褐色で、縦に浅い割れ目が入り、老木では薄くはがれます。
名前の由来は、葉が香りを発することから、「香出(かづ)ら」が転訛したと言われています。東北地方では、昔、この葉を集めて乾かして粉末にし、抹香をつくったことから、別名「マッコノキ」と呼んでいます。単に香りがするので「コウノキ」とも呼ばれています。その香りは、綿菓子のような、キャラメルのような、焼き菓子のような、甘い香りと表現されることが多いです。この香りの正体は「マントール」という物質で、カツラ以外の多くの植物にも含まれています。新緑の頃も葉をちぎったりすると香りますが、マントール含有量が少ないため、あまり香りません。秋の黄葉時になると含有量が増えて、樹のある所からはなれていても甘い香りを嗅ぐことができます。
成長が早く20mを超える大木になり、成長した樹木の姿が美しいことから、公園樹や街路樹でも、陽の光をさえぎって憩いの場としての利用目的から植樹されます。高森東公園・修景公園ともに大木があり、特徴ある葉の並びで、存在感を醸し出しています。
カツラの葉は、葉身は長さ4〜8cm、幅3〜8cmの広卵形或いはハート型で、長枝では対生。短枝につく葉は1枚だが、短枝が対生するので、葉も対生しているように見えます。葉には掌状の脈と、縁には波状の鈍い鋸歯があり、両面とも無毛で、裏面は粉白色を帯びています。葉柄は長さ2~4cmで赤みを帯びます。
カツラの葉の連なりを生で観てください。下がり目に伸びる枝に対生して付く姿にきっと魅せられますよ。見た目、ハート形の連凧が斜め上に連なっているかのような姿に感じませんか。独特の様子を見せてくれます。カツラの葉はただ丸みがあるだけでなく、ハートの形をしていることから、人気があります。花が終わる頃に萌黄色の葉が開きはじめ、徐々に明るい緑色の葉へと変化するのですが、色味が薄いこともあり、日に透ける姿も魅力的です。幼い葉は赤みを帯びることもあるようです。赤は柔らかい新葉を食い散らす虫たちを遠ざけます。
カツラの花は、雌雄別株で葉が展開する前に開花し、雄花・雌花とも短枝につき、花弁も萼もなく、基部は数個の膜質の苞で包まれています。
雌雄の花を見分けるのはやや難しいですが、雄株に咲く雄花の葯は紅紫色で長さ約5mm、房になって長い花糸でぶら下がります。多いと30個ほどの雄しべが垂れ下がり、雄株の樹全体も遠くから見ると、木全体が赤みを帯びます。雌株に咲く雌花には3~5本の花柱を伸ばしその先の雌しべがイソギンチャクのように見えます。
最初に、白亜紀や古第三紀から生き延びる原始的な樹木と紹介しました。ゆえに花弁はないとされています。1億年くらい前からたいして進化もせず、原始的な姿で生き延びてきた希少種です。カツラの花は、雄しべが垂れ下がるだけで、一方の雌しべは様々な方向に花柱を伸ばしているだけで、受粉は風任せの風媒花です。大きな群落をつくらないタイプにとっては、効率の悪い送粉形式と言えます。さらに雌雄異株だから、個体数が減少してしまうと受粉効率も低がってしまう。だから衰退の途上にあるとも言われているとのことです。眺めるだけで、目にやさしく癒しになる樹木なだけに、大切にしてゆきたいですね。
雌株にできる果実は、10~11月に長さ1.5cmほどの袋果になります。やや反り返った円柱状で先端に細い嘴があります。まるで小さなバナナのような果実がなります。濃緑色から次第に黒紫色に熟してゆきます。この点もバナナそっくりですがここまで。果実は熟すると開裂して、小さな種子が出てきます。翼を含めて5mm程の長さで、形は扁平で片側に翼があります。
カツラは翼のついた種子で、風に乗って散布してゆく風散布で、次の世代へ命を広げてゆきます。種子は小さく軽いため、風に乗れば散布距離は大きいのですが、種子から発芽した実生はサイズが小さく、死んでしまうことが多いとのこと。カツラの実生は、倒木の上や粒子の細かい土壌の上など、ごく限られた環境でしか育たないと言われているそうです。それゆえ大きな群落はつくらず、カツラ林、カツラの群落なんて聞いたことありませんよね…主に渓谷の谷底や水の流れの脇に点在するように自生しているとのこと。
カツラの果実を食べる主な野鳥は、アトリ科のカワラヒワやマヒワらになります。食べ物が乏しい真冬の栄養源として、果実の中の種子を食べます。
独特な形の雄花雌花を見に、高森東公園・修景公園へ足を運んでくださいね。さらに秋に黄色に色ずいた葉もみる価値があります。ぜひどうぞ。