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更新日:2025年3月25日
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高森東公園・修景公園の四季 第三十五回 ヒマラヤスギ
高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。
その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。
高森東公園・修景公園の四季 第三十五回 ヒマラヤスギ
名前はスギでもマツの樹木 ぼっくりは樹上で崩れて翼果が飛行し次世代へ命を繋ぐ
英名:Himalayan Cedar
ヒマラヤスギは、マツ科ヒマラヤスギ属の常緑高木で、名前のとおりヒマラヤ山脈西部の標高1500mから3200mの地域が原産地の針葉樹です。国内では本州以南で植栽されています。高さは40m~50m、時には60mにまで成長し、幹の直径は3mに達するという。枝は水平に伸びて先端が下垂して、全体できれいな円錐形の樹冠を作ります。樹皮は灰褐色で、古くなると鱗片状に剥がれてきます。
葉はゴヨウマツのようで、長さ2~3センチの針状の短い葉が密生していて、スギの仲間なのかなと思いきや、マツの仲間である最大の証拠として、写真のようにマツボックリが樹上のあちこちにできるのです。大きなまつぼっくりですが、樹の上の方で、はっきり言って手元で観るのが難しいのですが、2018年の東北を襲った台風の際に、宮城野区鶴ケ谷の公園のヒマラヤスギが根元から倒れたので、じっくりと観察する機会がありました(この頁最下部の写真参照)。根回りを見ても健康体(樹)でした。ではなぜ倒れてしまったのか調べてみると、他の樹木に比べ、根が浅いといった特徴を持つとのこと。風に弱いため、植え込みの当初は支柱を添えるとともに、密に育つ枝葉を剪定によって風通しを良くし、倒木を防ぐ必要があると記されていることも発見しました。
名前の由来ですが、ヒマラヤスギは、冒頭のように、マツ科の樹木。それなのにスギ(杉)の名が付いてしまっています。日本に初めて入った時、英語名の「Himalayan Cedar」の「Cedar」を「杉」だという意味にとってしまったといわれています。杉は英語で、Japanese Cedarと書くゆえのことなのだと。それで、日本に生えるCedarに対して、ヒマラヤに生えるCedarだから「ヒマラヤ杉」の名前になってしまったというのが、事の顛末だといわれています。本来なら『ヒマラヤマツ』だったのかもしれません。
針のような形をした葉は、ほとんどが2~3cmの長さで針状の短い葉が枝に密生しています。時には7cmに達することもあります。細長く厚さは1mmほどの断面は鈍い三角形~円形で、各面に白い気候帯があります。葉の色は、若葉では青白色、成葉では銀緑色から青緑に変化します。葉は、先端部の長枝の葉はらせん状に密生してつき、短枝には15~20個の葉が束生して…見かけで束になっているようにつきます。
ヒマラヤスギを間近で見たことがある人なら、カラマツの葉によく似ていることに気づいた方いるかもしれません。見分け方は簡単。手に刺して痛ければ、ヒマラヤスギ、それほどでなければカラマツとなります。また、ヒマラヤスギの枝葉は揮発性の特有な香りを発散させ、バクテリアやカビを抑制するフィトンチット(森林の香り成分)による抗菌作用があることが知られています。
ヒマラヤスギの開花期は10~11月で、雌雄同株です。受粉して球果=松ぼっくりができるまでに1年の月日を掛けて翌年の10~11月に観ることができます。
雌花は浅緑紫紅色の円錐形で短枝に頂生します。高いところに上向きにつくので、観察が困難と言われています。しかも、樹齢30年を超えないと雌花を付けないと言われていて、数も雄花に比べずっと少ないのだそうです。さらに難しくしているのが、開花時は約5mmとミニミニサイズで、発見が困難なのです。でも、冒頭に紹介した倒木したヒマラヤスギのおかげで、写真に収めることができました。(倒れて横になっていましたが、上向きに載せます。上の写真左下)これから一年かけて種子を内包生長させます。
一方の雄花は、長さ2~5cmで緑黄色の円筒形、短枝に頂生します。開花期は花粉症の原因となる真黄色の花粉をまき散らします。上の写真右下が若い雄花で、花粉を散布する前の姿です。成長し花粉をまき散らした(上の写真)の後は、役目を終えて、いらぬ栄養を使わないように樹下に落ちます。
雌花の球果は一年過ぎて成熟すると、長さ7~13cm、幅5~9cmの樽形の形になります。写真右上の写真の青白い球果は、7月のまだ未熟な様子を撮影したものです。9月後半なるとカサが開いてきて、中の種子が成熟に向けて育っているのだろうことが伺われます。
写真左側中央は、左下の種子…割れる前の種子を大事に成熟するまで、布団のように抱いている「種鱗」と呼ばれる部分です。成熟するとともに開いてゆき、松かさが開いて崩れてゆきます。写真左中の、布団の役目の「種鱗」も松ぼっくりから剥がれ、その際に左下のような翼の付いた「種子鱗片」或いは単に「種子」が散布されます。種鱗は種子の発射ステージの役目も担います。散布の際には、種子は真ん中から離層して半分に割れて、種の部分が重しにもなり、回転の際に軸になって、くるくると回りながら落ちる際に、翼に風を捉えてさらにさらに遠くに飛んで行くのです。「風散布」といって、子孫をさらに広い地域に広げてゆく戦略です。
球果は樹上で崩れて、種鱗や種子が外れて飛んで行った後の姿は、写真右上の蝋燭と蝋燭台のように軸と最下部の種鱗が残った姿になります。また球果全体の頂頭部…先端部だけ種鱗がまとまって外れる様は、薔薇の花のような形を残して地面に落ちているように観え、これを洒落て「シダーローズ」(写真左中央)と呼びます。このシダーローズは、リースなどの花材に利用されます。宮城野区の公園のヒマラヤスギが根元から倒れた時に、ほぼ球果の形で落ちているのをいくつも捉えました。崩れたものもたくさんあったのですが、崩れずにほぼ球果のままで落ち葉のクッションに包まれているのを見つけました。そこで、まだ離層して分かれていない様子、「種子」が、布団の役目の「種鱗」に抱かれている姿を観るべく、見つけた球果から慎重に外して撮影できました(写真左下)。
高森東公園のヒマラヤスギを観察する際は、双眼鏡をもってきましょう。11~12月に雄花、球果にシダーローズ、蝋燭台の姿もご覧いただければと思います。雌花は難しいと思いますが、種子鱗片は見つけられるかもしれません。トライしてみてください。