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第十六回 ハウチワカエデ

2024年8月4日

高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。

 その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。
 

高森東公園・修景公園の四季 第十六回 ハウチワカエデ

葉の様子は天狗の羽団扇、葉の大きさも相まって紅葉黄葉がとても美しい

英名:Japanese maple 'Hauchiwa-kaede'Fullmoon maple

 

ハウチワカエデは、本州以北の山間に自生する高さ510m、直径2030mになる、ムクロジ科の落葉高木で、北海道〜本州の山地で、野生のものはブナ林、山地の沢ぞい・谷間や谷間に続く斜面に多く樹生します。寒冷に強く北海道から本州の日本海側に多く分布しているといいます。より高木層のブナに被われていても生育可能な耐陰性の強い樹種です。

修景公園・高森東公園のハウチワカエデが、団地ができる前の野生種でそれを公園の中で生かしてなのか、公園を機に植えられたのかは分かりませんが、幾本も見つけることができます。なんでも幹が直立しがちであることや枝葉の出方が単調であることから、本来は公園の木や通り沿い街路樹の樹木として使用されることが少なかったが、秋の紅葉(黄葉)が美しいことから使われるようになったとのことです。

 

ハウチワカエデの名前の由来は、天狗が持つカラスの羽で作った羽団扇(はねうちわ)の形に似ていることからきています。和名は「羽団扇楓」となります。後半のカエデは、葉の形が動物のカエルの手に似ていることから…かえるで…カエデとなったとのことです。

別名に、メイゲツカエデ(名月楓)があります。全体的に葉が丸いことと、紅葉の美しさが際立つことが、秋の名月の光で紅葉していると思うことで、その美しさと風流を楽しんだのでしょう。英語名の二つ目は「Fullmoon maple」で、メイゲツカエデを英訳した名前となります。

 

 ハウチワカエデの葉は細枝から対生して、径712cmで掌状に911浅裂または中裂して、全体には丸くまとまった卵形となります。葉の縁には重鋸歯…大きめの鋸葉に小さな鋸葉が重なってある様、つまり、指のように大きく分かれて、さらにそれぞれに細かな鋸歯のようにギザギザしている様のことです。一般によく知られているイロハカエデは5~7に深裂した掌状なので、分かりやすく見分けできます。さらに、葉質はやや厚く、若葉は両面に白色の軟毛があるが、成葉では裏面の主脈および脈腋に毛が残ります。

 

新緑の葉の様も美しいですが、紅葉の美しさは、葉の丸みと大木さも相まって、とても美しいです。紅葉の色ずきの色は赤がほとんどですが、気候・地理的条件などにより橙色や黄色に紅葉するものもあります。

紅葉は、光合成で葉の中に作られた糖分が葉の中に溜まり、濃度が上がったところに日光が当たると、葉緑素のクロロフィルが分解され活性酸素が生じやすくなり、「アントシアニン」という赤色の色素が葉の中にたまっていって葉の表面が赤くなり紅葉の葉になるといった理屈で染まっていきます。日光が良く当たる場合には葉が赤くなるのです。

黄葉に染まるのはと言いますと、葉に当たる太陽の光が少なくなり、気温も低くなると緑色の葉緑素の成分が徐々に壊れていきます。すると、それまで隠れていた黄色の粒子「カロチノイド」が見えてきます。葉が黄色く変化するのは、「カロチノイド」という黄色い粒子が葉の表面に現れることによって黄色に染まっていくのです。

 ハウチワカエデの花は、46月に前段で紹介した葉が芽吹きだすのと同時に、若枝の先に散房花序を出し、雄花と両性花が混生した小さい花が1015個の花がまとまって下向きに咲くのが特徴です。花弁・萼片(がくへん)ともに5枚あり、花冠は紅色で直径約1センチメートル、67mmの萼の色は暗い紅色です。

ハウチワカエデの花は「雌雄異熟」といって、独特の仕組みを持っているとのことです。ハウチワカエデは、雌花が先に熟す両性花(雌花先熟)で、同時タイミングで別の花序の咲く雄花や両性花の雄性期の花粉を一手に引き受けて、自家受粉を避ける仕組みで、強い子孫を残そうとしているとのことです。花序の中の小さな花は、花序の中心から咲き始め、順々に側方の花が咲いていきます。最初の花が咲いてから最後のつぼみが開くまでの期間は3週間~4週間とされています。これだけ花期が長いと、初めに受精した花は、果実になっていきます。すると、次の段で紹介する種子=翼果は、5月から観え始めます。左下の写真はその写真です。79月に向けて熟していきます。

果実は偏平な翼果で、斜めに翼を開出します。ドラえもんのタケコプターをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。そのタケコプターの形で熟していきます。花柄だった部分がタケコプターの果実を支える軸になります。その果実の近い部分に種子が二つでき熟していきます。5月はまだ薄っぺらいですが、67月と膨らんでゆきます。

楓の仲間は翼果の翼を広げて、風が吹くとさらに元の地点から遠くに飛んでゆきます。でもタケコプターの形のままでは回転しません。タケコプターのようにその軸を中心に回るのではありません。完熟すると、軸に近い二つの種子の間が離層して別れて、翼とバランスをとる種子の重りとのそれぞれの役目で、くるくると回転しながら落ちてゆきます。分果は長さ約2〜2.5cm、ふつう触ると短い軟毛があります。5月からその姿を見せてくれますが、79月までに熟して種子になる部分が膨らんでゆきます。

離層すると、翼をプロペラのように回転させながら落ちる…飛行して、その際に風に乗ることでより遠くに飛んで行く仕組みです。離層しないと回転せずに落下するだけとなります。いわゆる「飛ぶ種」と言われる翼を有して風で広がる風散布です。翼が大きいことから、強い風に乗ると100m以上も飛ぶことができるという。次世代に向けて広い範囲に子孫を残そうとする戦略です。 
 

 最後に・・・こんな説明をしている文献を見つけました。「モミジとカエデの違い・・・葉の切れ込みが深いカエデを『〇〇〇モミジ』、葉の切れ込みが浅いカエデを『〇〇〇カエデ』と呼んでいる。…というものでした。

修景公園・高森東公園にも咲いているイロハカエデはイロハモミジという別名もあります。モミジの名の由来は、秋に草木が黄色や赤色に変わってゆくことを意味する動詞「もみず」に由来して、名詞化することでモミジになったとのこと。別々の由来を持つ双方の名がついているように、今ではそのモミジもカエデも同じような似た葉を指して、そう、同じ樹を指して「紅葉(もみじ)が綺麗」や「楓(かえで)が綺麗」と使われていることから、その傾向があるというくらいでこだわらずに納めておくべきなのかもしれません。

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