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第二十一回 サルスベリ

2024年9月8日

高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。

 その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。

高森東公園・修景公園の四季 第二十一回 サルスベリ

計算されつくした花の形状 イミテーションの雄しべと生殖機能を持つ本来の雄しべが役割分担

英名:Crape myrtle

 

 サルスベリは、中国が原産の高さは10mにも育つ落葉高木樹です。サルスベリは自然樹形でも形が整いやすいことから、庭木や公園に、さらに街路樹にも植えられ人気があります。日本由来の樹木ではないことから自生はないとされていますが、林や里山内に点々と育っているのを観ることがあります。その理由は後ほど。

 名前は、樹を見ればその名からもわかるように、成木の幹は樹皮が剥げ落ちてツルツルしており、木登りが得意な猿さえも登るのが難しいとして名付けられています。和名の「猿滑り」は前文章のまま、「百日紅」は、開花時期の100日と長い特徴を当てられました。花が少ない夏季の貴重な樹木の花であり、白やピンクなどの色鮮やかで少し変わった花を咲かせるといった特徴があります。

 サルスベリの葉は、長さ5センチ前後、幅2~3センチの丸みのある楕円形です。縁にはギザギザはなく葉縁は全縁で、葉の先端が尖るもの、尖らないものがあり、葉の出方も枝によって変異があります。若い枝からの葉の出方に特徴があります。互生で枝から生じますが、1対ごとではなく2枚単位で左右に交互で生じる「コクサギ型葉序」という生じ方をします。若い樹ほどその傾向が強いとのことです。両面とも無毛で葉柄もほとんどない様で枝より出ています。秋に黄あるいは少し進んでオレンジ色に紅葉します。

サルスベリの花は、雌雄同株で同花に夏、咲きます。もっと正確に言うと日本列島は長いので6月から9月或いは10月初旬まで咲いています。今年の高森では、7月最終週に咲き始めました。夏に花を咲かせてくれる、しかも100日程度と開花期が長いといった特徴があります。盛夏に咲く樹花があまりないことからも貴重な樹木となります。一輪の咲く期間は1日花とされていますが、次項に書いていますように、花びらが変わった形のため、咲いたばかりの盛りの時間が分かりにくいこともあり、数日咲いているように観えます。

さらに咲く様も変わっていて、魅力ある花を咲かせてくれます。遠目には円錐花序(写真上左右)といって、本年の枝先に小さな花の集合体をブドウを逆さにした房のように咲かせます。一輪の花(写真左下)は、よく見るととても変わった形をしています。直径34cm、色はピンク、赤色、白色などになります。次の項の写真のように、高森東公園では赤に近いピンク色です。花弁は6枚でうちわ型なるも、不規則にひだが生じて縮れて波打っています。花弁の基部は、よく観る花柄ではなく細長い柄のようなもの「爪」があります。6枚の花弁の中心に、雄しべが飛び出るように見せてくれているのが特徴です。雄しべは多数あります。見た目でもわかるように2種類の雄しべが観えます。葯が紫褐色の長い雄しべと、葯が黄色い短い雄しべとがあります。さらに、雄しべに囲まれるように1本の長い雌しべがカールした姿であります。長い雄しべと見間違いやすいですが、葯がないことで確認できます。

さらに、花弁の付き方を観ていると、うちわ状の花弁の付き方、開き方に規則性があるかもしれないと感じました。6枚のうちわ状の花弁の内1枚だけが、雌しべから他の花弁とは少し距離が離れてように感じました。右の写真を見ていただくと、カールした雌しべがある花弁だけが少し(この場合だいぶ下の方に)広がっているのではと思いました。受粉してからだいぶたっている花のようで、紫色の約を持つおしべは下がっています。

 調べてみて納得したことがあります。雄しべのうち、黄色い葯が頭についた中心部にかたまってある雄しべは、旗印の雄しべで「ここ目掛けて飛んできて」という役目を持ち生殖機能がない雄しべで、紫褐色の葯が頭にあるカールした長い雄しべが、本来の雄しべとのことです。飛んできたハナバチのお腹や側面に生殖機能を持つ葯が付いて、花弁が開いたほうにホバリングして飛んでいる際にその葯が雌しべに触るといったねらいだと分かりました。
 

花の後にできる果実は、直径7ミリほどの球形になります。10月頭にはまだ青く、つぼみかと見紛うほどですが、11月頃に熟して茶褐色に変化します。すると頭部から6つに裂けるように割れて長さ4ミリほどの種子が現れます。種子は上部には種の部分より広い翼があり、果実の裂けた間に風が吹いた際に、翼が風を捉えて果実から飛んで行き、回転しながら滞空時間を稼いでより遠くに飛ばされます。

さらに、野鳥も食べに来ます。嘴が力強く砕く力を持つマヒワやカワラヒワなどの野鳥が採食します。その後に糞に交じって種の部分が落とされて広がっていきます。そのように落とされた種は、直に落とされた果実の中の種よりも、発芽率が高いとの報告もあります。そうやって、里山のあちらこちらに点々とサルスベリの花を見かけることになります。

種が拡散された後も果実の殻は、チューリップの花のような形をしていて、ドライフラワーにしても楽しめます。

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