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更新日:2025年3月25日
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高森東公園・修景公園の四季 第二十八回 コナラ
高森周辺、そして泉パークタウンは、かつて七北田村の中心部から北西に広がる七北田丘陵と呼ばれる小高い丘が広がっていた地域で、高森辺りには立田山と呼ばれていた小さな山があって、その中に高森と呼ばれていた地域があり「高森」の名がついたとのこと。
その状況が示すように団地造成後も、立田山とその周辺の自然豊かな堤と里山が、堤と公園として幾箇所も残されました。その中から、高森市民センターの南と北に位置する「修景公園」と「高森東公園」の豊かな自然の様子をご紹介します。
高森東公園・修景公園の四季 第二十八回 コナラ
ベレー帽をかぶったドングリ 里山の人々の生活に寄り添ってきた樹
英名:Konara Oak
コナラは、日本を原産とする落葉高木の樹です。日本では多くの雑木林に多く見られる樹木です。高森東公園・修景公園でもコナラの樹を観ることができます。花は4~5月、サクラの開花とほぼ同じタイミングで花を咲かせます。でも全然話題にも上りませんよね。隠れるように咲いているんです。若葉が広がっているだけでは…と、聞こえてきそうですが、花はサクラのような花ではなく、花序といわれる垂れ下がる花の集まりで咲かせます。雄花序の咲き始めは、花序の長さも短く目立ちませんし、雌花に至っては、小さくひっそりと咲くといった具合です。秋に実るドングリは、多くの人がイメージする絵に書いたような実が実ります。
コナラの名前の由来は、ミズナラの木の別名が「オオナラ」なのに対して、「小さい葉の楢(ナラ)の木」なので「小楢」となります。その『ナラ』の由来は、1.葉が広く平らな様を「ならす」と言ったこと、或いは、葉が長いことを意味する「ながらは」といったことが転化して付いた。2.冬、枝に残った葉を、風が吹き鳴らすカザカザの音が『鳴る』のが転訛したことからついた。3.奈良の都の周囲にこの木の林ができたので、「奈良の木」と言われたとすることから、等の説があります。わたしは大量のコナラの葉が舞い落ちる様を見て聴いているので、2.が納得いきます。
葉は互生で長さ5~15センチ、幅5センチ前後で、葉身は倒卵形、あるいは倒卵状楕円形で柄が長めです。葉の周りは、のこぎりのような縁には尖った鋸歯を見せながら、楕円形で先端が尖り、葉先に近い方が葉の幅が広く、葉柄のほうが細く萎むのが他にはない特徴です。クヌギの縁は波打っていることで、オオナラとは、葉柄の長いことで、コナラと区別できます。春に萌え出す若葉は、ベルベットのような産毛に覆われています。ちなみになぜおおわれているかというと、葉芽から開いたばかりの葉を食する昆虫らに「食べてもおいしく無いよ」と思わせるためです。葉が大きくなれば産毛は取れてきます。
コナラの紅葉が始まると、秋も本格的なんだと感じます。コナラの紅葉は他の樹種に比べると遅く、色合いも渋め。コナラの葉は、通常秋には黄色く黄葉します。たまに条件が整うと、さらに色づいて、多少朱の入った山吹色に、条件が整えば見事に赤く紅葉していくこともあります。調べていると、若い木ほど紅葉が美しいとのことです。
自然観察会をする際には、果実=ドングリから葉が開いた1年目の実生を紹介することを心かけています。コナラのドングリが落ちていることと、そのドングリの栄養を使ってから根を出し、芽を出して育つことを実感してほしいからです。ドングリの仲間は、子葉(双葉)が地上に現れない「地下子葉性送信」という特徴があるそうです。わたしも師から何度もそれは双葉ではないと注意されていました。双葉って本葉と違ったまんまるとした印象ですよね。例えばアサガオなどもそうです。写真のように、最初から葉の縁には鋸が観えますので、やはり双葉ではないことがわかります。写真は、そんな1年目の実生を春に見つけ掘り出した時の写真です。いっぱいに詰まったどんぐりの栄養を使い切ったのか、かろうじてどんぐりのかたちが残っていましたが、スカスカでした。
花は4~5月、若葉の展開と同軸して咲き始め、本年枝の下部に多数垂れ下がります。雄花(写真右上3枚)の雄しべは4〜6個、黄褐色で小さく、花被は直径1.5mmほどと小さく、5〜7裂しています。一つの花序に垂れ下がり多数付きます。最初は短くて目立たちません。後に4~8cmにまで伸びていきます。
雌花(写真下2枚)は、本年枝の上部の葉の脇から出ますが、写真はマクロで撮ったので大きく見えますが、雄花よりもさらに小さく5mm程と目立たちません。花は、大抵まとまって2~3個付いています。軟毛が密生した総苞に包まれていています。その後、雄花序から風で運ばれてくる花粉を受け止めて、後に2~3個ずつまとまっていた雌花がドングリになって(向きはばらばらですが)実っていくのです。
秋になると実る堅い実は、ドングリと呼ばれていますのはご存知ですよね。上の写真は受精した後からドングリが完成するまでを5つのシーンにして撮ってみました。どんぐりが生長しているのが分かりますね。里山で講座をする際には、よく小学生に質問してみます。「秋にどんぐりがたくさん落ちますが、ドングリという木があると思う人?」と。コナラやミズナラ、クヌギやカシ、マテバシイなどの、球形や卵形で堅く、下方を殻斗 (かくと) が包んでいるかたい実を「○○の木のどんぐり」或いは略して「どんぐり」と呼んでいて、ドングリの木は無いこともと知ってもらいました。
コナラのどんぐりは、仙台では秋10月になれば熟して、次世代へ命をつなぐべく落とす。コナラの帽子、瓦状についた殻斗は皿型で浅くしか覆っておらず、さらっと外れて木から落ちる。殻斗を残したまま落ちることが珍しいほどです。その落ちたコナラのどんぐりを、リスやアカネズミ、さらにカケスも落葉やその下の土の中に貯蔵して、忘れてしまうのか、次世代への命をつなぐ手伝いをしてくれています。これを動物の「貯蔵散布」と言います。右の写真は根が出始めたところ、3月の撮影です。
コナラのどんぐりは、人間の食用には向きません。タンニンが多く含まれているからです。どんぐりコーヒーってコナラのドングリでないの?と思われるかもしれませんが、大変な手間がかかっているようです。調べてみると、タンニンはタンパク質と結合する性質を有する水溶性ポリフェノール成分の総称で、苦み、渋み成分として知られています。緑茶にも多く含まれていますが、コナラのどんぐりからタンニンを取り除くには、水から12時間以上も煮沸することが必要とのことです。一方、マテバシイ、スダジイのドングリはタンニン含有量がそれほど高くなく、苦みもたいして強くはないことから、煎っただけでも食用になるとのこと。
そんなタンニンですが、コナラをはじめとして植物にとっては、次世代へ命をつなぐために備えた防御物質です。リスやアカネズミ、野鳥のカケスなど。ネズミにとってタンニンは、有害物質、食べる量によっては死んでしますこともあるそうです。そのように、動物の一機会に大量の摂取・摂食を防ぐ役割を果たしていると考えられています。
コナラは人々の営みの近くの里山に雑木林として配置されていました。薪にすると火力があり長持ちすることから、人の手によって人里近くの里山に植林され、人々の営みの傍で愛されてきました。さらに伐採した後も切り株さえ残していれば「ひこばえ(萌芽更新)」と呼ばれる芽が出て、15~20年ほどで薪炭に適した太さになるほど成長が速いことも支持された理由でしょう。さらに、落ち葉は、促成して半年、一年もかけると堆肥としてというか正確には「自然由来の土壌改良剤」として使用できます。樹は、シイタケのホダ木に適しています。だから里山には、コナラがよく植えられたのです。
講座で腐葉土づくりをしたことがあります。そこは毎年どっさりと里山からコナラの枯葉が飛んでくる地域でした。嫌のことを良いことに転換し地域の活動に生かそうと始めて今も続いています。土壌改良剤は腐葉土促進剤と米ぬか用意して、後は水があればできます。それらを入れておく大きなマスを用意して始めますよ。あなたも始めてみませんか。