真美沢公園の四季 第十六回 キッコウハグマ
2022年9月16日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第十六回 キッコウハグマ
亀の甲羅に似た葉と 花が開かずとも次世代に命をつなげる閉塞花を持つ
英名:無し
キッコウハグマは、本州〜九州のやや乾いた山地の林内の木陰に生える多年草です。山の中に自生していることが多いとされ、里山の道沿いで咲いているのは珍しいのですが、真美沢公園内真美沢東口からの小径沿いに観られます。葉は茎の下部に5〜11個集まってつき、長さ1~3cmで五角形で、葉の模様も含め、亀の甲羅に見えることから「亀甲」に見立てて。「白熊(はぐま)」は、ヤクの尾の毛でつくった飾りをいい、兜、槍の白い飾りにた果実をつけることで。和名でそのまま「亀甲白熊」と記します。花の時期も短く、花の開かない閉塞花もあることから、マニアには花の時期探し回ることでも知られています。
林内の日陰に長い柄のある葉が茎の下部にのちの伸びてくる花茎を中心に、ロゼット状に展開します。その葉身は長さ1-3cmの心形、まれに腎形または卵形で、5角形になり、浅く5つに裂します。変異が大きく6角形になることも。その葉の表面に一見ほりの深そうな脈が見えます。脈に沿って緑が濃くなって見え、それが葉の形と相まって亀の甲羅に見えてきます。
9~10月に、長さ10~20㎝に伸びた花茎の先に、まばらな総状に頭花を数個~10数個咲かせます。花の形は長さ10~15㎜の狭円筒形。頭花は一つの花に見えますが、よく見ると花柱にも映る「葯筒」が3個飛び出ており、3個の小花がくっつきあって一つに見せているのがわかります。花冠は白色、長さ9mmほど、先は5つに深く裂けて、縮れた花弁が花車の世にも映ります。総苞は長さ1〜1.5cmです。
このキッコウハグマは、雌雄両性で、会着した3個の花に、それぞれに3本の雄蕊(葯筒)が見えます。「葯筒」の先を、目をこするようにしてみると、(上の写真右下:参照)先が分かれていない葯をつけた雄蕊筒(手前の花)と、雄蕊筒から花柱が突出して、二つに分かれている(奥の花)のが見て取れます。「葯筒」の先端が二分した様は、雌蕊(花柱)が突出してきて、他の花からの花粉に頼ることなく自家受粉するとされているとのことです。
上の写真の上部のキッコウハグマの小花は、閉鎖花と言って、花を開かずに受粉する「自家受粉」仕組みをもっています。その仕組みを持つがゆえに、開花する花が少ないことから、たとえ開花しても葯を抱いている時期、花柱が突出した時期と、花の時期が短いことから、マニアの間ではその開花をとらえたくて探し回るそうです。
果実は痩果で、長さ約4.5㎜、幅約1.2㎜。痩果に約10本の縦肋が観え毛が密生し、肋の間にも毛が散生敷いていて、全体に密毛が生えている印象です。その先にはアザミにも似た長さ7~8mmになる冠毛が観えます。羽毛状に枝分かれして、傘のように開き、その一本一本にも密生しています。見てお分かりの通り風に乗って種が運ばれて広がります。
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