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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第七回 コバギボウシ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第七回 コバギボウシ
花茎にたくさんのつぼみを付け下方から上に花が咲き始める
英名:plantain lily
雨が多く湿気がまとわりつく7月は体調を崩しやすい季節ですよね。しかし植物にとっては、雨と湿気は成長の恵みです。ギボウシは、梅雨に入ると急速に成長し、重なり合った葉の草丈は20~30cmほどで、その間から1mほどの長い花茎を伸ばし始めます。その花茎にたくさんのつぼみを付け、下方から上に花が咲き始めますが、朝、夜明け前に開いて午後にはしおれてしまうという儚い命の一日花です。
ギボウシのうち、日本国内の野生種では、オオギボウオシ(和名で「大葉偽宝珠」)と、コバギボウシ(和名で「小葉偽宝珠」)とに大別されるとのこと。真美沢公園の東黒松口から入るところには、コバギボウシが6月後半から7月に咲きます。今回はこのコバギボウシを取り上げます。
コバキゴウシは、本州〜九州までの日当たりが良く乾燥しない林縁や草地や、特に湿原に好んで生えるという中型の多年草です。ギボウシの仲間は日本にも複数の野生種が分布しています。単にギボウシという名の植物はなく、ギボウシといったら(細かく種を分けて考えず)ギボウシ属に分類される植物の総称として用います。
名前の由来は、和名で思い当たるように、伝統的な建築物、神社や橋の欄干の飾りでよく見かける偽宝珠(ギボシ・ギボウシュ)に、オオギボウオシの蕾がよく似ていることからついたとのことです。
葉は多数根出する単葉でさじ型、長さ10~20cm、幅5~8cmの披針形で、表面の脈はへこみます。よく見かける一般的なホスタ(ギボウシの栽培種)に比べれば明らかに小型に見えます。そんな小型の葉が密生し重なるように生長します。そのコバギボウシの小振りな葉は観葉植物としては少々見劣りするか。うっかりすると葉の様は。オオバコに見えなくもなかったりします。英名の「plantain lily」はオオバコユリという意味でこれはオオバコに似ているためだとのことです。
花期は6月後半~8月で、重なり合った葉の間から50~100cmほどの長い花茎を伸ばし始めます。その花茎にたくさんのつぼみを付け、下方から上に花が咲き始めます。漏斗型の淡紫色〜濃紫色の花は長さ4〜5cmでやや下向きにつけ、下半部は細く、上部は広がる漏斗型の6弁花で、内側に濃紫色のすじが観られます。ギボウシの花は、朝開いて午後にはしおれてしまうという儚い命の一日花です。
コバギボウシは秋に稔り、果実は長さ2.5cmの蒴果…種皮に密着して薄い果皮をかぶった実です。中には仕切りが入り3室あり、内部には翼の付いた種子が数個づつ並びます。熟すと3裂し、種子は長さ1cmの楕円形で黒色、片側に種の部分が、反対側には翼の部分があり、風が吹くとさらに遠くに散布されます。
冒頭に「朝、夜明け前に開いて午後にはしおれてしまうという儚い命の一日花です」と紹介しました。実は個体差があるようで、早いのだと前日の21時ごろには、つぼみがほころび始めるとの記事も見つけました。深夜から夜明け前には、はっきりと開いて、次世代へ命をつなぐ準備が始まります。自己受粉はできない花なので、確実な受粉に向けて花柱も雄しべも漏斗型の花びらよりも突き出て待つ戦略です。このように夏の夜明け前から朝早くの時間帯に、花蜂を誘って受粉し命を次世代へつなぐのです。漏斗状の花であることから、誘う相手は小型のマルハナバチらと思われます。