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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第七十一回 ヤブラン
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第百七十一回 ヤブラン
花軸に青黒く輝く宝石・・・地面に投げつければスーパーボール
英名:big blue lilyturf, border grass,
ヤブランは、日本では全土、主に関東以西の本州・四国・九州・沖縄に分布する常緑性多年草。山野の林内で樹木の下草として自生する。湿気のある半日陰地を好んで生じます。葉は濃緑色で線形、厚くて光沢があり、多数の葉が群がり大きな株になる。夏に株の葉の間から多数の花茎が立ち上がり淡紫色の小さな花を総状に多数つけます。花の後、種子がむきだしになって成熟して紺黒色の液果となります。古より日本古来の山野草として人々の傍らに咲き親しまれていました。
葉は根元から生じ、草丈は30~60cm、幅は7~12mmと細長く、線形、濃緑色で厚く光沢があり、多数の葉が群がり大きな株になる。葉先は鈍頭で縁に細かな鋸歯があり、その先端は垂れます。同様に根元からじかに群れて葉が乗じる似た種にリュウノヒゲやキチジョウソウがありますが、より長く、より幅広になります。
夏に株の葉の間から、高さは30〜50cmの多数の淡紫色した花茎が立ち上がり、その上部3割から半分ほどに、9~10月に、早いと8月お盆頃から淡紫色の小さな花を総状に穂状花序(スイジョウカジョ)を形成してたくさんの花を咲かせます。花軸にびっしりと遠目にブラシ状に淡い紫の花は遠くからでも見つかることができます。花の花被片は楕円形で6枚、やや上向きに咲きます。うち小さな内花被が3枚、外花被が3枚となります。雄しべは6本で先は黄色い。子房は平たい円盤状で花の上から見え、1花柱があり、花柱の先に観える雌しべは1本です。花は下から順に咲いていきますが、朝夕には萎みます。
花名にランが入りますが、ラン科の植物ではなく、ユリ科の植物となります。別名で、学名のリリオペ(Liriope)と呼ばれ、栽培種として店頭に並んでいることも。
ヤブランの果実はさく果だが、果皮が薄くて脱落し、種子がむきだしになって成熟して蒴果となる変わった性質を持っています。球形で若いときは、透明度のある淡い薄緑色、後に深い緑となり、最終的に紺黒く熟して光沢がある直径6〜7mmの蒴果ができます。一見果実のように観えますが、むき出しになって成熟する蒴果の果皮を一皮むくと乳白色の胚乳(種子)が表れます。
スーパーボール…ゴムの小さなボールを弾ませて遊びますよね。夏祭りでスーパーボールすくいも見かけます。私の子どもの頃はそんなのはありません。でも、このヤブランやリュウノヒゲの蒴果を固い地面に投げつけて弾むのを楽しみました。弾み玉と呼んで、誰がいちばん弾むかを競いました。
ヤブランの根は太くて短く、土の中で互いを絡ませながら、伸びています。ところどころで肥大します。この肥大した部分は養分を貯めるために根が肥大したものと考えられています。栄養を十分と貯めて、秋口に花軸をグググっと一気に伸ばして花を咲かせるのです。その肥大化した根は「大葉麦門冬」と呼ばれ、リュウノヒゲ(小葉麦門冬)とともに、咳止めや滋養強壮などの漢方薬としてもちられているそうです。
今では園芸種としても親しまれていますヤブランが、古の時代より山菅の名で親しまれているのをご存じでしたか、万葉集に詠まれている山菅や菅の根の歌が計32首となっているという。古くから日本人の傍で咲き、園芸として親しまれているのではないかと。菅の根としてしっかりと土に絡んでいる様を知って歌に詠まれ親しまれているのですから…。
万葉集 第十二巻 山菅之 不止而公乎 念可母 吾心神之 頃者名寸
詠みは…「山菅(やますげ)の、止(や)まずて君を、思へかも、我(あ)が心どの、この頃はなき」
意味は、意味:いつもあなたを想っているからでしょうか、この頃の私の心は落着きをなくしています。山菅の音の響きを生かして、「止まず」という言葉へ導いて、山菅のイメージを残したままで思いを寄せているのが伺えます。「心どの」というのは、しっかりとした心、という意味で、心はあなたに奪われていると恋しさを詠っているという。
万葉集 第十二巻 足桧木之 山菅根之 懃 吾波曽戀流 君之光儀乎
詠みは…「あしひきの、山菅(やますげ)の根の、ねもころに、我(あ)れはぞ恋(こ)ふる、君が姿(すがた)を」
意味は、山に咲く山菅の根が深く根付くように、私はあなたの姿を心から恋しく思っています。となります。恋心の歌に山菅や山菅の根が…ヤブランが読まれるほど万葉人の生活の傍らにいて親しまれていたことが伺えます。