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更新日:2025年3月25日

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黒松市民センター

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真美沢公園の四季 第四十三回 オオイヌノフグリ

真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。

第四十三回 オオイヌノフグリ

秋に延ばして広がり 春に花を広く面で咲かす

英名: Veronica persica, Persian speedwell, Large field speedwell, Winter speedwell

オオイヌノフグリは、秋に茎をよく分岐してひろがり、翌年の春早く「春を告げる」ように花を咲かせる越年草(二年草)。原産地はヨーロッパで、日本へは明治時代の初期に渡来した帰化植物です。茎は地面を這うように伸びて、葉腋の先に直径1cm足らずの小さな瑠璃色の可愛らしい花を咲かせます。這い拡がった後は、一枚目の写真のように上にも伸びていきます。葉は茎の下部は対生、上部は互生の卵状広楕円形。8〜16個の鋸歯。さく果のふちにだけ長い毛がみえます。

3月に入って、真美沢公園で最初に咲く花はなんだろうと期待しながら歩いていると、オオイヌノフグリのつぼみを見つけました。オオイヌノフグリは、明治の初期に自生しているのを気づかれたとされ、現在では日本全国的に広がっています。短期間のうちに?どうして…後で分かります。日本にはもともと、イヌノフグリ(2枚目下写真)というほぼ同様の花が咲いていましたが、オオイヌノフグリに追いやられるように生息範囲を狭めているという。さらに、育成地自体も開発により減少しているために数を大幅に減らしているとのこと。絶滅危惧II類に指定されていました。

秋に芽を出し、茎はよく分枝して横に這うようにして広がります。葉は茎の下部では対生、上部では互生し、長さ0.7〜1.8cm、幅0.6〜1.5cmの卵状広楕円形で8〜16個の鋸歯があります。オオイヌノフグリの成長への戦略は、他の植物が枯れる秋遅くから這うよう伸び、さらに下草が人の手で借り取られてライバルがいない冬の間に地面の上に低く横に広がり勢力を伸ばします。葉っぱや茎に短い毛が生えていて、寒さから身を守っています。春まだ早いうちは、高さは5cmもない。後に上にも広がり高さは10cm~15cmにもなることも。

写真を見ていただいても、他の草が刈れているところを伸ばしている様が感じ取っていただけると思います。

花期は3〜5月。茎の上部の葉腋…葉と葉のついている茎とのまたになった部分から、長さ1〜2cmの花柄をだして瑠璃色の花をつけ、紫色の筋が入っています。花は直径0.8〜1cmで。基本的に一日花で、日が昇ると開き、夕方にはしぼみます。観ていると、翌日は同じ花がまた開いていると感じて調べてみると、2日或いは長いと3日閉じてまた咲くという。

正面から見ると花びらが4弁に分かれているように見えるが、後ろから見ると1つにつながった合弁花です。花径は5ミリくらいで、花の中央には雄しべが2本と雌しべが1本あります。日中、シジミチョウやアブ類などの昆虫の、他家受粉を待ち、できなかったときは夕方花が閉じるときに雌しべに雄しべがくっついて自家受粉をするという。確実に受粉する方法で果実が実りその中で種が出来、日本中に広がっています。

花を終えた後にできるさく果…熟すると下部が裂け、種子が散布される果実は、長さ約4mm、幅6〜7mmで平たく、ふちにだけ長い毛がある。その実が二つ並んでいる様子が、名前の由来につながる。イヌノは「犬の」の意。フグリは陰嚢(いんのう)、睾丸(こうがん)を意味します。さらに、オオ…は、花が日本在来のイヌノフグリに比べて大きいので「大(おお)」が頭につきます。イヌノフグリの実の形が、犬の陰嚢に似ているので、植物学者の牧野富太郎さんが名づけたという。花の名前が「犬の陰嚢(ふぐり)」からというのが、「ちょっとがっかり」と思われる方も多いようです。上の写真のように種子の形が、犬の後ろ足の間に垣間見えるふぐりに似ていることからの名前で、花とは無関係。「星の瞳」「瑠璃唐草(るりからくさ)」「天人唐草(てんにんからくさ)」などの別名があり、親しまれている花ですので、親しんでいただければと思います。さらに、今人気の俳句では「犬ふぐり」は、春の季語とのことです。

参考にイヌノフグリのさく果も左側に載せてみました。オオイヌノフグリ[右側]に比べて丸っこいのがわかると思います。見つけたら貴重です。

種子には、「スプリングエフェメラル」と呼ばれている春植物ならではの、「エライソーム」が種子にくっ付いています。エライソームがアリを引き寄せ、巣に、或いは巣近くに運んでもらい、さらに広がっていきます。写真の種子のくぼんでいるところにエライソームがついています。

このオオイヌノフグリについて調べている中で、初めてオオイヌノフグリに「雑草」という定義を付けている記事を見つけました。植物のことを述べ書かれているのに十把一絡げに・・・。と思いました。先に記しました、牧野富太郎さんは「日本の植物学の父」と呼ばれており、「雑草という草はない」という言葉を残されているそうです。私も名前がわからないとつい雑草と言ってしまいがちですが、雑を取って「この草」或いは「この野草」というように心がけています。

秋に、下草を刈るという人の営みを利用して、茎をよく分岐して広がることや、春に自家受粉で確実に実りを得、更にアリに助けを借りて聖域をさらに広げるその戦略は、すごいと思いました。だから明治以降でも日本中の広がっているんですね。5月まで長い期間見ていただけると思いますので、ルーペを持って、真美沢公園でご覧ください。群生しているところを指でかき分けると、きっと「ふぐり」の様子も見られますよ。

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