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更新日:2025年3月25日

泉区 センタートップ

黒松市民センター

〒981-8006 仙台市泉区黒松1-33-40
電話番号: 022-234-5346 
休館日:月曜日、祝日の翌日、年末年始

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真美沢公園の四季 第五回 クリ

真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。

第五回 クリ

秋の味覚を代表する果樹 3重の守りで次世代へつなぐ

英名:chestnut

クリといえば、秋の味覚を代表する果樹。現在だけでなく、農耕が始まる以前の古代には重要な食糧とされ、その名は「古事記」にも登場するなど、古の時代から人々に広く用いられ愛されて食されてきた果実ですよね。三内丸山遺跡からもたくさん見つけられ、秋の時期には主食となっていたようです。真美沢公園でも白い花が咲いていました。

クリは、北海道南部から九州まで広い範囲の山野に自生、枝がよく分枝して大きな樹冠をつくり高さ15~20mほどになる落葉高木です。

クリのはといえば、表面は濃緑色で光沢があり、主脈の両側に何本もの側脈が主脈を中心に対にきれいに並び、縁には鋭い鋸歯が、先端の針状になっていて独特の形状となっています。葉身の長さは7~14cm、幅3~4cmの狭長楕円形です。よく似たクヌギの葉とは、その色合いが異なり、クリの葉のトゲは緑色なのに対して、クヌギは先端の色が抜けていることで見分けができます。

クリは6月に花を咲かせます。その花からは独特の臭いが広がります。「青臭いに匂い」と表現する方もいますが、人間にはお世辞にも良い匂いとはいえず、むっとする匂いと感じられるかもしれません。日照条件の良い場所に育っているなら、クリの樹木全体が白くなるほど雄花をつけます。遠くからでもクリの木がそこに在ると確認できるほどです。ブナ科の落葉樹・・・簡単に言うとドングリの実がなる樹の中では、遅い時期の開花である点でも、あの樹はクリなのではと思わせてくれます。

花は、花びらを持つタイプではなく穂状に咲きます。雄花は長さ20cmほどに垂れ下がります。花穂の根元に海のイソギンチャクにも似た様の雌花が咲く、雌雄同株です。ドングリのなる木の多くが、風を利用して花粉を受粉している風媒花なのに対して、クリの木は見た目、同じ風媒花に見えます。この文書の冒頭に取り上げていますように、独特のにおいでたくさんの昆虫を集めている虫媒花です。垂れ下がっている雄花で誘い、その花穂の根元に雌花を咲かて昆虫を誘うといった戦略です。

クリの周りの針の様の「毬(イガ)」を含む覆いの部分全体を「殻斗(カクト)」と言い、書きます。扁平な球形で、外面に長さ1cmほどの刺が密生していますよね。中のクリの果実が熟すると、樹からイガのままで落ちたり、4つに割れながら落ちたりしています。もともとイガはなんなのか?あれは「苞葉(ほうよう)」と呼ばれる部分で、蕾を包むように葉が変形した部分で、雌花が受粉したであろう段階からすでに針状になっています。雌花が受粉後時間たつと、肉眼でも将来イガになるだろう小さな苞葉を確認できます。コナラなどの場合は帽子といわれている分になります。

中の果実は、「鬼皮(おにかわ)」と呼ばれる硬い皮に包まれています。その先端にはひげのようなものが付いて、これはめしべの名残です。この鬼皮は、単に「皮」と呼んでいますよね。実はあれは「果肉」の部分で、中の食べている部分は「種」に相当する部分となります。つまり、皆さんは栗の種をおいしく食べている、ということになります。

では、イガの役目は何なのだろう。まだ成熟していない、次世代へ命をつなぐ果実が食べられないためと考えられています。コナラなどの実と違ってタンニンが含まれずにそのまま食べることができますよね。イガがもしなかったら、動物や野鳥がこぞって集まる果実になると思います。イガは“身を守る働き”いやあらためて“実を守る働き”をしている、となるようです。

クリの防御は、1.カクトに密生するイガの突き刺すぞといった防御。2.鬼皮と言われる固い皮。3.最後に鬼皮の内側に覆われている渋皮といった、三重の防御を持っています。強力ですよね。でも、クリを拾ったり、それをゆでたりしようとした方なら出会っているでしょう。鬼皮に空いている小さな穴、そして出て来た丸っこい幼虫に。あれは、クリシギゾウムシの幼虫です。秋に成虫は、クリに卵を産み付けます。イガの防御をすり抜けて。体長8〜10mmのクリシギゾウムシ。ゾウムシと言われれば、その名の通りその長い口…口吻が特徴です。オスが3.5mmほどに対し、メスが持つ8mm程の長い口吻を使って、イガをもろともせず、栗の実の渋皮付近まで穴を開けて、穴の底に卵を産みつけるとのこと。おいしいクリを食べた幼虫は、後に実が落下すると、栗の鬼皮に3mm程の穴を開けて出て地中に潜ってしまうとういう。

クリシギゾウムシは、クリにとっても、クリ栽培農家にとっても天敵とのこと。天然のクリは間違いなくほとんどのクリにこのクリシギゾウムシの幼虫が育っています。採集したクリは水につけておくと羽化していれば出てきます。そのあとは陰干ししましょう。ただしクリは浮くので水没させてください。羽化していないと思われる場合は、80度くらいのお湯に1分ほど入れて死滅させましょう。クリの風味を損なわない温度です。そのまま食しても害にはならないとのことです。クリシギゾウムシに負けないで天然のクリもおいしくいただきましょう。

実は、黒松市民センター脇にも、見事なクリの木があります。6月の花満開の写真です。

その下には、雄花序が沢山落ちています。どうしてなのか調べてみました。すると…役目を終えた雄花の花序は、花序の手前の雌花は受粉が終わったとして、無駄花となるのでしょう。無駄に栄養を雄花に流れないように離層して落としてしまうとのことです。しっかりと成長の過程で仕組みとして組み込まれているのですね。感心します。

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ひょうたん沼の四季 記事作成にあたって

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