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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第十三回 チヂミザサ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第十三回 チヂミザサ
長短2本の針と粘液で強力に刺さってくっつく「ひっつき虫」
英名:Wavyleaf basketgrass、Spicate armgrass
チヂミザサは、北海道〜九州の林縁や林地の木陰に、ちょっとしたこんもりした薮の縁などにも生育し、やや群生する。高さ10~30cmの多年草。基部は長く地を這って枝分かれし生長する。道端や原っぱの縁でもではあまりめだたないものの、ここあそこに生息しています。葉は互生し、広披針形で先は尖る。葉は縁が縮んで波打つのが特徴でそれを目当てに探せます。イネ科の特徴の通り、花びらを持つ花はつけません。8月から10月にかけて茎先に約10センチの穂状花序を伸ばし、長さ約3ミリの狭卵形した小穂を多数つけます。
上の写真のように、群生しているというよりは、他の植物との競争の中で生息しているのがほとんど、波打つ葉を目当てに探してみてください。
茎は枝分かれしながら著しく地表を匍匐し、節から直立または斜上する枝を伸ばし高さ30〜50cmになります。その節は太く短毛が密生しています。葉は長さ3〜10cm、幅7〜15mmの広披針形で、茎に対し互生でつきます。先端へ向かってやや細まり、先は次第にとがります。葉の基部は葉鞘となって茎を抱く様になります。葉色は濃いめの緑色になります。最大の特徴は葉の縁が縮んで波打つことで、他と区別できます。名前の由来もそこからきているという。上の写真のように群生しているのはまれです。1枚目のように他の植物と競争しているのがふつうにみられます。その周りを注意深く見ると、他の植物の葉に隠れても、匍匐して広がっている姿を見つけることができるかもしれません。
茎先の上半分位に着ける花序は、8月から10月にかけて上の写真のように10〜12cmの穂状花序を伸ばして、長さ約3ミリの狭卵形した小穂を、横或いは斜め下向きに1〜6個つけます。見た目は一つの小穂ですが、その実は、下の写真のように小穂は雄しべと雌しべを包む外花頴(ガイカエイ)と、退化し結実しない内花頴(ナイカエイ)からの2つがくっついて構成されています。
イネ科の特徴として花弁のない花を、つまり雌しべの花柱と雄しべの葯のみが開出します。雌しべの羽毛状の毛の下に、紫色の葯の雄しべがぶら下がる様となります。開花時の雌しべの柱頭の羽毛状の毛が目立ちます。外花頴の羽毛状の毛の先に出る雄しべの紫色の葯も比較的目を引きやすく、見つけやすいです。雌しべの羽毛状の白い毛を観つけられれば、思わず「ラッキー」と声が出るほど。毎日散策して何とか撮影できました。
小穂の基部には2個の苞頴(ホウエイ:蕾を包むように葉が変形した部分)があり、その先端に長い芒(ノギ)をつける。この芒が後に大事な役目を持ちます。
果実が熟すると、長さ0.3cmの小穂は、基部で外れやすくなります。その中には種子があります。それを次世代への命をつなぐ仕掛けが、小穂についている長い芒と少しそれより短い芒が一本、それぞれについている粘液です。粘液が球状に点々とついていますね。そこを通る小動物の体毛について、その後しばらくしていずれかの場に落ちてそこに新たな命が芽生えるといった形で命をつなぐのです。チヂミザサは芒と粘液によるいわゆる「ひっつき虫」のひとつとなります。
芒が衣服によく突き刺さること。粘液でべたべたしていること。これにより自然には衣服から剥がれ落ちない。手で払っても全然落ちない。歩いているうちに勝手に剥がれ落ちては・・・くれません。指で摘まんで一つ一つ摘み取って除去する以外に手はない。百個ほどをちまちまちと取り続けたこともあります。山野を歩いたあと、洗濯した靴下を履いたらなんかちくちくすると思ったことありませんか。チヂミザサの芒が一部残ったままなのではと疑ってみるべき。
なお、このチヂミザサを、茎や花序軸に開出する毛の多いもの、少ないものなどあり、毛が多いものを「ケチヂミザサ」(左側)、毛の少ないものを「コチヂミザサ」(右側)と分ける場合もあるとのこと。あまり気にせずに散策していただいて構わないと思いますが、参考にしてください。