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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第四十八回 キリ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第四十八回 キリ
秋果実は羽衣を纏って遠くに旅立つ
英名:Empress tree、Foxglove tree、Princess tree
中国を原産地とする高木の落葉広葉樹で、材木に使う有用樹として古くから植栽されたものが野生化し、北海道南部~九州の各地に分布しています。寒さに強いこともこの樹の特徴です。特に東北地方、関東北部、新潟県などに広がっています。灰褐色の樹皮で、直径は最大で50センチほどに成長します。春桜が終えた4月末頃から紫の花が山野を彩ります。
キリの成長が早く、切られてもすぐに芽を出すため、「切る」が転化してキリと命名されたとか。そんな特徴を生かして箪笥などの家具材、生活材に用いられてきました。
葉は直径10~30センチにも及ぶ幅広の大きな葉です。葉の変容は様々ですが、その多くは浅く3裂しています。若い葉は不分裂も、5つに浅く分裂する葉もまれに見られます。葉の縁にギザギザの無い無縁で、濃緑色です。葉裏には線毛が生えていてやや粘着性があります。若木の葉は特に大きくなります。葉柄が長いのも特徴です。
キリの開花は新葉の展開に先立つ4月末~6月始めに、淡い紫色の花が枝の先に大きな円錐花序が直立し、淡い紫色の花を円錐状につけます。個々の花の花冠は長さ5cmほどの釣鐘型で先端は口唇状に五つに裂け、外側は短い軟毛に覆われています。雌雄同株の両性花で、4本ある雄しべのうち2本は長く、花冠の外側へ突き出す。花の裏側にある萼は褐色です。
桐の花は古の時代に朝鮮半島をわたって日本に伝わってきた由来があります。その際、中国では鳳凰の止まる木とされ重宝されていたことを受けて、高貴な意味のある植物として扱われてきた歴史があります。鶴ケ谷のひょうたん沼の散策路沿いにキリの木のが群生しており、不揃いながらも並木になっています。花の最盛期には、薄い紫色の花が集まった円錐状の様は、荘厳でしばらく立ち止まって見入ってしまう程です。その紫は高貴な色とされたことから、かつては宮廷の庭園や貴族の屋敷に植栽されていたとのこと。さらに、円錐花序を含めた樹形や、円錐状の花序の姿は、紋様や紋所のモチーフとしても使われています。日本に渡った後でも皇室の紋章として使用されています。ご存じでしたか?500円玉の表には円錐花序を含めた樹形がモチーフになって描かれていますよ。
花後には先が尖った卵形をした直径2~3センチの果実ができます。果期は7月~翌年1月と長期にわたります。果実は熟すると二つに分かれます。その中から飛び出す種子は長さ3.5〜4.5mm、その周りには、半透明の長さ0.5〜2mmの翼があります。その形は独特で、陽の光を受けて透けて観える姿は「天使の羽衣」と称されています。一つの果実からその翼のある種子が風を受けて数千個も飛び出して広がります。羽の形状からも想像できるように、遠くまで風を受けて飛んでいきます。落ちたその土の上での発芽率は高く、成長も早いことや、伐採しても根株を残すと旺盛に繁殖するといった特徴を持っています。
キリは日本国内でとれる木材としては最も比重が軽い木材とのこと(比重0.27-0.30)。独特の光沢が出て、材質に至っては広葉樹や針葉樹の繊維構造とは異なる独立気泡構造を持っていて、湿気を通さず、割れや狂いが少ないという特徴があります。高級感ある日本の建具、家具、箪笥や楽器の材料に使われているとのこと。今ではあまりカランコロンと鳴らしている様を見られませんが、私も桐の下駄を高校生から30年程使っていました。丈夫で足裏にも優しかったです。
今年の花の脇には、昨年の果実が残っています。でも中の羽衣達はきっと旅立っています。たまに残っていることもありますが…。羽衣をルーペで拡大してのぞいてみてください。陽の光を浴びてきらきらと反射して輝いているのを見ると感動しますよ。