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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第十一回 キンミズヒキ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第十一回 キンミズヒキ
秋、茶筅に似た強力なひっつき虫に変身
英名:hairy agrimony
盛夏から初秋にかけて、キンンミズヒキ(金色の水引)と呼ばれる、めでたい名前を持った花が野山を彩ります。真美沢公園内の小径を歩くとその脇に黄色い小さな花をたくさんつけている細長い花穂を見つけました。熨斗袋(のしぶくろ)につける金色の水引に似ていることからこの名が付いたとされています。北海道〜九州の林縁や道ばたや草地に生える。高さ30〜100cmほどに伸びる多年草。全体に粗い毛が生えており、穂状にたくさんの花を咲かせてくれます。秋、熟した果実(タネ)は「ひっつき虫」として、動物や人間の衣服について生域を広げてゆきます。
葉は等間隔に互生する奇数羽状複葉(鳥の羽のように左右に小葉がいくつか並び、先に1つの小葉がついて1枚の葉が構成される:ヤマウルシでも紹介)で5~9枚の大小不ぞろいの小葉からなる一枚の大きな葉となります。写真では5枚の大小大きさの違う葉が、5枚で大きな一枚に見えませんか?その一つの小葉は菱状長楕円形から菱状倒卵形で長さ3-6cm、幅2cmほどになり、先端がとがり、縁にはとがった粗い歯牙状の鋸歯が見られます。葉の裏面には白色または帯黄色の腺点が多数観られます。葉柄の基部に托葉(葉柄の基部付近に生じる葉身とは別の葉状片)が合着し、ふつう半卵形で内側に曲がり、縁に粗くとがった鋸歯が形成されています。
花期は8月から10月始。茎の先に細長い穂状の総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、黄色い小さな5弁花(花びら)をたくさんつけて咲いており、花径は7~10mm、長さ3-6mm、幅1.5-2mmの小さな花びらは倒卵形から狭倒卵形に丸みを帯びています。その黄色い花は、総状花序の下から順に花を咲かせます。さらに360度いろんな方向に花を開いていく事で、受粉作業をオオなってくれる昆虫たちを引き付けています。金色(本当は黄色)に輝いて…。
雄しべは8~14個あり、花弁よりも短いです。その下の花床筒はスカートのような倒円錐形で、長さ5-6mm、径4-5mm。花びらを支える萼片も5個です。花期を終えると萼片が閉じて円錐状になるのが特徴です。その萼片の周り(縁)にも副萼片と呼ばれている突起が多数あり、後に大切な役目を持ちます。
秋になると、萼筒の中には・・・閉じた萼片に守られて、その中で果実…種子が熟します。果実の大きさは、3mm程です。円錐形の平らだったところには、茶筅のような形状で、いわゆる「ひっつき虫」になります。ひっつき虫のかなめは、花の時に萼片の縁に並んでいた副萼片が変化したもの。拡大して観るとしっかりした針のような先は返しになっていて、一度引っ付くとなかなか外れないのが分かります。
自分の子孫を残してゆく戦略に、風で運んでもらったり、昆虫や野鳥に運んでもらったり、水に浮いて流れていった先で・・・といった様々な戦略で次に命をつなぐ中、ひっつき虫は、動物の体に引っ付いて後に剥がれて落ちた先で芽を出して命をつなぎます。
その萼筒の果実、旅立つ仕組みは良く作られたもので、未熟なうちはほっそりとしているため、たくさんある針の返しが近接し、さらに方向も円の中心に向けて同じ方向にと引っかからない。実って種子の準備が出来上がった時には、ふっくらとむちっとなって針と針の間隔も開き、さらに針の返しの方向も、萼筒全体が乾燥するのと合わせて四方八方へと拡がっていくので、どちらの方向から触られてもすぐに“ひっつく”といった具合となるのです。自然の営みって、ほんとう良くできているんだなと気づかされます。