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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第七十四回 ヤクシソウ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第七十四回 ヤクシソウ
頭花は12,3枚ほどの舌状花に、先が二つにカールした雌しべが特徴の黄色い花
英名:無し
北海道〜九州の山野の日当たりのよいところに生える二年草です。全体に無毛で、よく分枝して高さ0.3〜1.2mになります。路傍や崖地などの乾燥しやすい場所に生育しますが、比較的大きく生長し、枝分かれして高いものでは草丈1mほどに生長します。1年目はロゼットの状態で生育し、2年目の9月から11月にかけて直径1.5cmほどの黄色の頭花を数個ずつつけます。よく知るタンポポのように黄色い花びら一枚一枚が個々の花でその集まりの様となります。
名前の由来は、楕円形の蕾を抱くようにして茎に付く葉の形が薬師如来の光背に似ているから、葉などを傷付けると苦い乳液が出ますが、はれものに使われていた薬草であった、あるいは薬師寺のそばで見つかったなど諸説あるようです。白い乳液のような液体を出すことから、チチクサやウサギノチチなどの別名があります。
その葉を縦に置くと、それこそ、薬師如来の光背の形に、その丸みが似ています。でも本来はレンゲソウの花びらの形を指し「舟形光」と分類されています。でも比べると、ヤクシソウの葉の形の方がしっくりと来ます。
ヤクシソウは、山野の伐採地や路傍、崩壊地や崖地などの乾燥しやすい場所に生育して、比較的大きく生長し、枝分かれして高いものでは草丈30~120cmほどになります。ひょうたん沼でも繰り返し伐採される道脇の境目に見つかります。
1年目はロゼットの状態で生育し、2年目の8月から11月にかけて花を付ける越年草。1年目はロゼットを形成して根出葉のみで生育する。根出葉はさじ形から円に近い型になるものまでで葉柄があります。2年目に茎を出し、枝分かれして繁茂するが、花時には根出葉は枯れます。
薄い葉の縁は不規則に浅い鋸歯があり、茎の基部に付く葉は基部が楔形になって葉柄に流れて翼になっています。上部に付く葉は、より深く基部が耳状になって茎を抱きます。両面無毛で裏面は粉白色。秋が深まると赤い点ができやすい傾向もあるそうです。
ロゼットから2年目に茎を出し、枝分かれして繁茂するその先、上部の葉腋(ようえき)から出た散房花序に、集散状に黄色い花をいっぱい付ける。9~11月ごろに花を咲かせます。タンポポと同じように一つの花に見えるその花は、“頭状花序”といって多数の花が枝を介さずにまとまって咲いているさまを言います。タンポポのように密集せず、下部中央の写真のような黄色い一つの舌状花が12、3ほど集まり、径は1.5cmの一つの頭花となります。花はタンポポを一重にしたような簡素な外見ですが、黄色い小さな花をここぞとばかり威勢よく咲かせます。
花の真ん中には雌しべが集めりあり、長く伸びてさらに、二つにカールしているのが見分けるポイントの一つです。その雌しべのつけ根の部分に、取りまくように筒状になった雄しべが多数あります。黄色が濃く見えるのがそれです。黄色い舌状花が周りを囲むように位置して咲くことから一見一つの頭花に見えるといった様で咲かせているのです。
頭状花序をさせて取り巻くように付く総苞は黒緑色で、7mm~9mmの円筒形です。花のあと、頭花は下向きになり、下部はふくれてかたくなります。実りの準備がはじまっていきます。
ふくれて堅くなったその中で実るのを、さく果といいます。熟すると下部が裂け、種子が散布される果実を言います。さく果の中に多数の熟した果実が詰まっています。その一つはそう果と冠毛からなり、そう果は長さ3.5mmで黒褐色。そう果に付く純白色の冠毛はタンポポと同様に風を捉えて、遠くに種子を運ばせ生域を広げるというのが、ヤクシソウの次世代への戦略です。
秋になると近年、外来種のセイダカワダチソウなど黄色い花が、そこここに顔を出すようになりましたね。でも、日本の古から咲くヤクシソウは、アキノキリンソウと共に日本の山裾の晩秋を黄色く彩る代表的な野の花であり、この花を最後に山野の花の季節もほぼ幕を閉じるとされているそうです。