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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第六十九回 ホトトギス[植物]
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第六十九回 ホトトギス[植物]
花の花柱の形は時にメリーゴーランドに例えられています
英名:Toad lily
ホトトギスは日本の特産種で主に太平洋側、北海道南西部、本州の関東地方以西・福井県以南、四国、九州に自生するユリ科の多年草です。日陰や半日陰の湿った場所を好み、傾斜地や崖、岩場などに自生している山野草です。ホトトギスと聞けば野鳥のそれをまず思い浮かべられるでしょう。花弁にある紫の斑点の様が、野鳥のホトトギスの胸にある模様に見立ててホトトギスと名付けられた。
花はユリを小さくしたような雰囲気なるも、見た目は派手。だが、意外にも詫び錆びの世界の茶華として尊ばれています。花弁の外側は白色で、内側に紫の斑点が、基部近くに黄色い斑点が入るのを基本とされていますが、色や模様の入り方には微妙な個体差があって園芸種も含め品種は豊富です。
ホトトギスの若葉には油をこぼしたような斑点が現れます。油点草(ゆてんそう)という別名もついています。茎は真っすぐに立ち上がりますが、先端は弧を描くように垂れます。特に法面などでは全体に下垂するように育ちます。草丈は30~100センチほどで、茎にも褐色の毛が上向きに密生します。
葉は左右に互生し、葉身は長楕円形から披針形で、長さ8-20cmになります。先端は鋭く尖るが縁にギザギザはなく、基部は茎を抱くようになっています。ルリタテハ(蝶)の食草であり、葉や茎には多少の食害が観られることも。なお、ホトトギスの漢字表記は、杜鵑草ですが、これは鳥のホトトギスと区別するためであり、「草」は発音しません。
葉のわきに、直径2~3cmで紫色の斑点のある花を上向きに咲かせます。茎はふつう枝分かれせず、まっすぐか斜めに伸び、場所や地域によっては弓なりに垂れることもあります。
ホトトギスの花期は8-10月、葉腋に1~3輪(たまに4輪)の花を上向きに咲かせます。花に花柄があり、花は漏斗状鐘形で径約25mmになります。花被片は6個で、長さ約25mmあり、斜め上向きに開いています。3個の内花被片と3個の外花被片があり、外花被片の基部に袋状のふくらみがあります。内側には白色地に紫色の斑点が多くあり、下部に黄色の斑点が観られます。
雄蕊は6個で、花糸は互いに寄り添って束状に立ち、上部で反り返って先端に小さな小判型の葯を外向きつけています(上の写真では花柱に隠れているのか確認できるのは5つです)。花柱の先は3つに分かれて球状の突起があり、各枝のその先はさらに2裂しています(紅色の濃いほうが花柱)。花の雌イベと雄しべの特異な様子は、それぞれに2裂二列した雌しべの先に人が乗るポットがつられるメリーゴーランドに例えられています。
この特異な花の形には、意味があります。一般に多くの花はハチなどの昆虫を媒介により花粉が付着・運ばれて、次の花で受粉されて、やがて種子が作られ、命を次世代へつなぎます。ホトトギスもこの特異な形で受粉を誘う昆虫がいるとの報告書を読みました。ハナバチの仲間で、トラマルハナバチが最も受粉に貢献しているという。
ホトトギスの花の蜜は、花びらの下にある丸い壺の中で分泌されます。6枚の花被片の基部の方が黄色いのを確認できると思います。それがトラマルハナバチにとって「ここに蜜があるよ」という表式です。花被片に乗って長い舌で壺にたまっている蜜をなめようと中へ寄っていきます。その際に、頭の後ろに雄しべの花粉が付き、或いは雌しべに花粉が付着するといった立体空間の冥が繰り広げられるのです。
果実は長さ4~5cm、先が尖った三角柱状の3室に分かれた蒴果です。それぞれの部屋には扁平な種子がびっしりと積み重なっています。熟すと先端が小さく3裂して裂け目は次第に広がる胞間裂開します。
種子は長さ約2.5mmの扁平な先が尖った卵形で、色は赤褐色、表面に細かな網目があります。