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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第二十六回 アキノキリンソウ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第二十六回 アキノキリンソウ
かつては秋を代表する「秋の道端の黄色い花」
英名:Goldenrod
アキノキリンソウは、日本各地の山地や草原で見られる多年草です。早いと8月後半から11月頃まで、北海道から九州、山地や丘陵の日当たりのよい場所に生える。かつては里山に囲まれた水田の周辺、ため池の土手などにごく普通に見られた秋草の代表です。
アキノキリンソウという名前は、「キリンソウ」と似たような黄色の花を秋に咲かせることからつけられました。「キリンソウ」はベンケイソウ科の植物で、5~8月に咲きます。間近に見ると花の形とか違う部分もありますが、黄色い花を茎の先にたくさん咲かせる点で一緒なことから付いたのでしょう。また、「アキノキリンソウ」は別名「アワダチソウ」とも呼ばれます。これは、花が泡立つようにここそこに咲く様からと言われています。
しかし、適した環境…例えば里山の林の枝が間引きされなど里山の周囲に陽の光が刺す環境が減る、水田に農薬が撒けれる、などの里山の荒廃が進み見られる場所が少なくなったといいます。さらに外来種のセイタカアワダチソウ…黄色の花の穂状の様子が三角形に見える花、に取って代わられて、「秋の道ばたの黄色い花」は、アキノキリンソウではなく、セイタカアワダチソウになってしまったに思えます。
アキノキリンソウに限ったことではありませんが、花が咲くとアキノキリンソウであることはわかりやすいですが、咲いていない状態では手がかりが少なく困る・・・アキノキリンソウもそんな植物の1つです。春に観られる根生葉は花時には枯れてないが、長い柄がある卵形~長楕円形です。茎の下から中頃の葉は、翼のある柄が観られます。長さ7-9cm、幅1.5-5cmの卵形~長楕円状披針形で先はとがり、縁に鋸歯があります。上部の葉は無柄、長楕円状披針形で表面に毛を散生します。
花が咲く前の見分けは、葉の鋸歯の先端に、小さな粒のような微凸端があり、裏面には葉
脈の網目模様があることです。この特徴ある網目模様を覚えておくと同定の手がかりになります。
アキノキリンソウの花の特徴は、何といってもきれいな黄色です。頭花…つまり、長く伸びたそれぞれの茎の先に黄色い花を散房状または総状に茎の上部に多数咲かせます。頭花は直径1.2-1.5cm程の大きさで、それを支える花柄は長さ3-6mmで有毛です。キクと同じような花のつくりで、正式には萼片外側に長さ6-8mmの雌性の舌状花が一列に4~6個ほどと、中心側に両性の筒状花が9~13個と多数集まります。筒状化は先に花粉を出す雄性期を過ごし、後に雌性期を迎えます。下の写真で、花粉がたくさんついている花柱と、その隣に、花粉を押し出すように雌蕊花柱が伸びて、花粉が飛び散ってしまったのと、さらにその隣に、雌性期に変わろうと粉を受け止めるべく花柱の先端が2つに分かれ始めた様子が観えます。花粉を受け止める体制ができているのが上の写真で確認できます。近くでも見ても可愛い花です。
アキノキリンソウは花が終わると綿毛…冠毛をつけます。この冠毛は果実一つ一つにつき、タンポポのような柄はありません。褐色の果実の中には種が入っています。果実の皮は熟すと乾燥して硬くなり、冠毛が帆の役目をして風が吹くと種の入った果実ごと飛んでいき、落ちたところで次世代へ命をつなぐ風散布で広がります。