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更新日:2025年3月25日

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黒松市民センター

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真美沢公園の四季 第二十一回 ホウ

真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。

第二十一回 ホウ(ホウノキ)

広告塔のような大きな花に、強烈な香りと食料としての花粉で、虫をひきつける

英名:Japanese Bigleaf Magnolia、Japanese whitebark magnolia

ホウノキは、北海道〜九州の丘陵や山地に生える落葉高木です。真美沢公園でも一段低い谷筋から出生しているにも関わらず、他の樹木より高く育っています。4拍子揃って大きいといった印象で注目している樹木です。高さ30mほどになり、樹形も大きく目に映ります。葉は互生で枝先に集まってつくのですが、人の顔よりも大きく育ちます。葉身は長さ20〜40cm、幅10〜25cmの長さ20〜40cmの倒卵形〜倒卵状長楕円形です。5〜6月に枝先に咲く花も直径約15cmの大きな花です。果実も、袋果が集まった集合果で、長さ10〜20cmの長楕円形で、10〜11月に熟します。落ちているのを真美沢公園の小径を歩いていて見つけました。

ホウノキの葉は枝先に大きな葉を車輪状に茂らせ、その葉の大きさは30~40cmと国内最大級です。晩秋に森を散策すると、足元に大きな枯れて落ちた葉が目に入ってきます。きっとホウノキで間違いないでしょう。

似ている大きな葉にトチノキの葉がありますが、ホウノキの葉には鋸歯はなく、滑らかで葉が大きい。花が咲く頃のものが、葉の香りも強い。葉を採るときは、輪生(一か所から輪を描くように生えて)いる元からまとめて採るようにしましょう。それを冷蔵保存すれば、年間通して使えますよ。

ホウノキの名の由来は、ご想像のとおり、「ホオ」は、「包(ほう)」の意味で、大きな葉で食べ物などを包むことに由来しています。ホウノキの枝先に大きな葉は、燃えにくく芳香もあることから、その香りが包まれた食材に程よくつき、朴葉味噌、朴葉包み焼き、朴葉餅など包むのに利用されたほか、昔から食べ物の皿代わりに使われてきました。殺菌・抗菌作用効果によって食材の保存に役立つ効果もあって両得です。

花も大型で、白色または淡黄色。大人の掌に余るほどの花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花します。6月に咲くといわれているホウノキ、真美沢公園春のオリエンテーリングの時には花が盛りを終えていました。下見の際は、甘い芳香が漂っていました。

花弁状花被片は9〜12枚で、外側の3個は短い萼状、淡緑色で一部紅色を帯びます。内側の6〜9個は白い花弁状で、眠りからさめて、夢見るように咲いてるように観えます。真ん中に円錐状にたくさんの雄しべと雌しべが多数らせん状に集まって咲いています。

両性花ですが、日によって「性」を変えることによって自家受粉を防いているとのこと。開花1日目は、右上の写真のように上半分の雌しべが張り出して雌花となる。乳頭状突起と思われる花粉が付着しやすい構造になっていように観えます。

二日目は、下半分の雄しべが円錐の柱から張り出して雄花となる。雄しべは長さ2cmほど、花糸は赤色、葯は黄白色。花の寿命は短く、開花するとすぐに雄しべはぱらぱら落ちてしまいます。花の寿命は短く3日程度。

なんでもホオノキの花は、1億年前に現れた「広葉樹の初期の姿」の一面を残していると言われているそうです。1億年以前に栄えていた針葉樹は、花粉を風で飛ばします。その後優勢になった広葉樹は、花粉を虫に運んでもらうことが多いと言われています。広葉樹初期のホオノキは、蜜で昆虫たちを集めるのではなく、大きな花に、広告塔のような雄しべ雌しべの集まりに強烈な香りと、食料としての花粉で虫をひきつけています。

広葉樹は、初期時代から変化して、甘い蜜を誘いに使って多くにミツバチなどの昆虫や、野鳥を集めて受粉を誘いますが、ホウノキのような広葉樹の初期世代は、花粉を食するために集まる昆虫がメインとなるためなのか、他家受粉の成功率が低く、自己受粉になる確率が高いそうです。

トロピカルフルーツのような姿をしたホウノキの果実は、袋果が集まった集合果です。長さ10〜15cmの長楕円形で、9〜11月に熟す。袋果は小豆くらいの赤褐色した小さな種で、中層は肉質です。中に長さ1cmほどの種子が2個入っています。雌しべの花粉が付着しやすい形の乳頭状突起と思われる名残が観えます。その突起一個一個に赤い実が実ります。触った感じは硬いですが、長い糸状の珠柄でぶら下がり、のちに撒かれます。熟すと紅色になって美しいが、種子が飛び出す様はややグロテスクになります。

空中から赤い実が撒かれるいうよりは、袋果が集まった集合果のままで、落下したのちに、野鳥や小動物に持っていかれて、食料になり、糞に交じって遠くに運ばれて行きます。冬になると下のような様になり、赤い実もほとんど飛び出すか、野鳥や小動物の餌になった後で、ホウノキと気づかないことも。

ホウノキの次世代へ向けての戦略は、調べてゆくほど素晴らしいと感じます。

一つ目に、高く生長することを優先させていること。余り枝を出さず、真っすぐ上へ上へと伸び、高さ20~30mの巨木に成長することも。さらに枝も太い。細かい枝を出さないのが特徴で、花をつけるようになるのは20年を過ぎてからとも。

二つ目に、強い他感作用(アレロパシー)を示すことが知られているそうです。ホウノキの樹冠下では、他の植物が生えることは少ないとのこと。これは、落葉や根などから分泌される他感物質により種子発芽や、発芽した植物の生育が強く抑制されるためであるという。そのため、自生地の樹冠下では下草が少なく落葉の堆積が重なり、自ら樹木の成長する栄養に使われているという。確かにひょうたん沼のホウノキの下も、若い木も育ってはいませんでした。

三つ目に、種子は地中で20年以上休眠できる能力をもっているという。陽樹であるホオノキは、眠っていた頭上にギャップができ、十分な光が射しこむと目が覚め、一気に芽生える。ただし、葉が芽吹く前の春から初夏にかけては、ギャップかどうか判別できないので発芽せず、ギャップを判別できる夏に発芽(土用芽)する習性をもっているという。

四つ目に、陽の光を効率よく受ける工夫をしていること。大きな葉は車輪状につくため、お互いが重なりません。一気に全ての葉を開かず、光条件に合わせて順次葉を展開していきます。明るい場合は、たくさん葉を開き、暗い場合は、余り葉を開かない。前述のように、速く生長して高さを稼げば、上の葉が下の葉の陰になりにくくなりますね。幹の形作ってゆく戦略が合理的にできていると感じます。

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