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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第五十二回 ヤハズエンドウ カラスノエンドウ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第五十二回 ヤハズエンドウ カラスノエンドウ
草むらに爆ぜる漆黒のよじれる莢
英名:Narrow-leaved Vetch
ヤハズエンドウは、ソラマメ属の越年草。真美沢公園に限らず、道ばたや畑、野原など、日当たりのよいところに見られる野草です。植物学的には、ヤハズエンドウが標準的に用いられる名前ですが、カラスノエンドウという名が一般に定着しています。その理由は、豆果が熟すと黒くなる事からという。他にスズメノエンドウに対して大きい事からとも。ヤハズは弓道の矢をあてがう矢筈から来ています。暗い莢が八の字を逆さにした矢筈のように実っていく様子からです。
秋に発芽します。あまりめだたないというか、意識の外にある野草ですね。春になると突然現れたかのように高さ60-150cmに達します。葉は8〜16個の小葉からなり、先の方の1〜3個の小葉はふつう3分岐した巻きひげになります。これ以降はなじみのあるカラスノエンドウで表記します。
カラスノエンドウの茎は四角張っています。その先からででる葉は羽状複葉で、8~16枚の小葉で、大きな一枚の葉とみなす。その先端の小葉は3分岐した巻きひげに変化しています。小葉は長さ2~3cmの狭倒卵形。その先端は、弓道の矢をあてがう矢筈のようにへこんでいます。右下の写真は越年して3月始めの様子を捉えた写真です。小葉もまだまだ小さく、それと気づくまで慣れが必要でした。
このカラスノエンドウの生き抜く戦略は、アリをたくさん呼び寄せ、葉や花を食べてしまう害虫を排除することです。葉柄基部に一対の三角形に見える托葉があり、そのつけ根に黒っぽい花外蜜腺があり、アリの好む蜜を分泌するのです。アリはカラスノエンドウのボディガードというところでしょうか。
ただたまに、カラスノエンドウにアブラムシが密生していることがあります。アリはアブラムシを排除するというより、お尻から出す分泌液をいただいて共生している関係ですから、カラスノエンドウから観て想定外というところでしょうか。
花期は3 – 5月初めでエンドウに似た小型の淡い紫紅色をしたチョウが飛んでいるような形の花をつけます。花の長さは12ミリから18ミリくらい。葉腋…葉と葉のついている茎とのまたになった葉の付け根からのびて咲かせます。
花のもとには5つに裂けた萼が有り、花びらは5枚あり、上の1枚は目立って大きい。その中に左右2枚、その下に2枚くっつくように舟形をしたものがあります。おしべ10本といわれていますが、見た目筒のようになっています。めしべ1本で、おしべの筒状の中から、めしべの先の柱頭を覗かせています。
花の後には、種子の入った莢をもつ実「豆果」を5-7月に斜上してつけます。細長い莢の長さは3~5cmの広線形となります。その中には、5~10個の種子が入っています。初めは緑色をしていますが、熟すとカラスの羽のように照りの入った黒色になります。カラスの色と、葉の矢筈に似たかたち、呼び名がカラス色に軍配が上がるのも理解できます。
この莢にもカラスノエンドウの未来へ子孫を戦略が垣間見えます。種を親元から広げてゆく戦略として、「弾き飛ばす」のです。莢が乾いてくるとねじれが始まります。形を保つのがむずかしくなり、「パン」と弾けます。日差しの強い日に観察すると、その音を聞くことができると思います。待てなかったら、莢にちょっと触れてみて。ちょっとの刺激で弾ける莢があると思います。ねじれるのは、果皮の繊維が乾くとななめ方向に収縮するからで、逆に雨の日には、ねじれた抜け殻の莢がまっすぐに戻っている姿も見ることができます。
若い実は、さやえんどうにそっくりで、葉の部分も含めて、湯がいて食することもできます。
人生の先輩たちに聞くと、カラスノエンドウのさやを割って種を除き、片方をちぎって吹くと、ビーと音が出るとのこと。子供の頃良い音を出すため、太った種を探すのを競ったのだとか。山梨県では、カラスノエンドウのことを、ふいた音そのままに「シビビー」(文字にしたーの有り無しはいろいろでした)と呼んでいるそうです。
最後の写真は、事務所に置いていた莢がはじけた後の様子です。
「バ~ン」とおとがして、なんの音だと探ると、カラスノエンドウのはじけた後でした。
事務所の中で反響したからか、意外に高い音でした。