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更新日:2025年3月25日
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真美沢公園の四季 第九十一回 コハコベ
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第九十一回 コハコベ
春の七草のひとつ 種子の生産性の良さで種子をばらまいて次世代へ命をつなぎます
英名:chickweed, common chickweed, chickenwort,
日本全土のいたるところに普通に生える越年草です。春に花を咲かせ夏まで長く観ることができます。10枚に観える白い花びらを広げる小指の爪ほどのとても小さな花です。そして秋に種から発芽して広がり越冬します。日本では18種類のハコベ属が生息しているそうですが、最も生域を広げているハコベです。その理由は強力な繁殖力にあるようです。その内容は後に。コハコベは外来種で麦の栽培とともにやってきたという。日本の在来種はミドリハコベで、コハコベに押されるように生域を狭めているようです。そのからくりは、たくさんの種子の生産と、茎は下部から多く分岐して四方に広がる繁殖力からくるとのことです。その繁殖力を逆手に利用して、戦後は栄養価の高い卵の確保にと家庭でも飼っていたニワトリの子ヒヨコの餌として使われていたことから、ヒヨコグサとも呼ばれていたそうです。
ご存じでしたか。コハコベの古名は、「はこべら」です。というと…そう、春の七草の1つとして親しまれていますよね。こちらも最後に。
茎は緑色、花を咲かす上部に行くほど赤紫色を帯びます。下部から多く分岐し、下部は地に沿うように上部は斜上して高さ10〜20cm程。中にひと筋の維束管があり、表面に1条の毛列が見られます。朝露なのどの水気を根元にしっかりと導く狙いがあると考えられます。冬の乾燥する季節でも元気に生育する秘訣ですね。他のハコベと区別する際に、茎の色が緑なのがミドリハコベ、暗紫色なのがコハコベと区別できます。
葉は対生し、下部の葉には葉柄があり、上部の葉には葉柄がつかない。葉のふちは全縁で卵形、葉の先が鋭頭となります。葉の長さ1〜2cm、深緑色無毛、下部に少し毛があり、柄も長い。対して上部の葉は無柄となる。秋に種子から芽生えて冬のあいだも地面にへばりつくように緑色の葉を広げて、暖かくなるのを待つ。暖かくなったら勢いを得てさらに繁殖し花を咲かせていきます。
花期は、春の4月から夏までの10月まで、暖かさの条件ひだまりでなどがそろうと、3月でも12月でも咲くとのこと。ただし、他の植物に覆われて、陽の光を求めて、茎を伸ばし、その先でひだまりのわずかなスペースで、花を咲かせます。人間の方が気づかないのかもしれません。
集散花序に小さな可愛い花を次々と咲かせてくれます。白色の花弁を5枚つけ、花径は6-7ミリメートルと小指の詰め程の大きさです。5枚の花弁は基部近くまで2深裂して、10枚に見えます。萼片も5つ、楕円形で鈍頭の形、長さ3〜4mmです。雌しべとなる花柱は3本。雄しべは1〜7本となります。雑草としては知られていても、花に注目される機会がないのかもしれません。白く素朴で可愛い花を見つけます。手に取ってご覧いただきたい。
果実は卵形、4〜5mm、花期の萼に守られるようにたくさんの種子が覗けます。種子は蒴果、円形、直径1〜1.2mm、明るい褐色でなだらかな半球形の低突起が観られます。種子の生産性がとにかくすごいと言われています。花期の子房の先に花柱が3個なのに、できた種子はみっしりと入っています。幅はあるようですが、5~11個と観察して確認しました。日本在来種のミドリハコベは3~5個とのこと、這う茎と共に、旺盛な繁殖力があるからこそ、今では日本中で、そこあそこでみられる身近な存在となっています。
野菜作りの講座を行う時には、畑に一面に生えているハコベの仲間を除草するといったこともよくあります。コハコベは柔らかくて根の張りも弱く、除草が簡単です。その特徴を生かして、野菜の邪魔にならない範囲で、できるだけ取らずに残しておくことで、他の雑草を繁茂させないといった逆の発想はいかがでしょうか。コハコベ畑の管理がしやすくなるといった・・・逆の発想です。いかがでしょう?
育てる野菜が春まいて秋に収穫する野菜なら、野菜と共生しやすいこと。ハコベは越冬して春に花を咲かせ、そのあとはタネをつけて枯れていきます。春巻き野菜とは逆になります。ちょうど成長のタイミングが入れ違いとなり、成長のための養分やスペースの奪い合いが起こりにくいからとなります。
さらに、ハコベ・コハコベが育つ畑地は地力が高い畑との指標にもなること。ハコベ・コハコベが多い畑はすでにある程度栄養素の量があり、その土地の生態系がより豊かになっているということと判断できるそうです。ハコベ・コハコベの花にいろんな虫がやって来て、育ちを助けています。昆虫とハコベとの共生関係も合わせて観ることが出来ます。そんな畑地ならバランスが取れている可能性が高いと判断できるのも、野菜を育てる際の目安になりませんか。目にウロコの情報ですよね。私も知った時はびっくりでした。
春の七草のひとつが今回紹介しているコハコベを含むハコベ類、古には「はこべら」と呼んでいた野草です。コハコベやミドリハコベが、七草がゆのパッケージに入れられる主な食材のようです。
春の七草を覚えていますか?五・七・五・七・七の音でリズムよく覚えるのがコツですよ。
『せり/なずな・ごぎょう/はこべら・ほとけのざ・すずな/すずしろ・はるのななくさ』
ちなみに、和名表記も載せておきます。セリ(芹)、ナズナ(薺:ペンペングサ)、ゴギョウ(御形:ハハコグサ)、ハコベ(蘩蔞)、ホトケノザ(仏の座:コオニタビラコ…キク科の多年草)、スズナ(菘:カブ)、スズシロ(蘿蔔:ダイコン)です。
古の時代は、野草を上手に生活の中に取り入れていたのだと思わされる季節行事ですね。