真美沢公園の四季 第四十回 トキワサンザシ
2023年3月5日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第四十回 トキワサンザシ
完熟したら食べにおいでと赤い果実で誘い、種を糞に紛れて広がる
英名:pyracanth, buisson ardent, firethorn
トキワサンザシは東ヨーロッパから西アジアにかけて分布する常緑低木で、日本には明治中頃に渡来した帰化植物です。5〜6月に直径10mmほどの小さな花を集まって咲かせてくれます。秋には鮮紅色の実を集まってつけます。この鮮やかな赤い実は、冬になると周りの果実が少なくなり、野鳥がついばみに来るという。その顛末は後程。
名前は、和名で「常磐山査子」となり、常緑で実がサンザシ「山査子」に似ていることからつけられたとのこと。
トキワサンザシはやや良好な土地、例えば公園の植栽枠の中などに、野鳥がついばんだ後、糞とともに種子を落とし、自然に芽生え育っていることが多という。真美沢公園では真美沢沼の北側、フェンス越し堤防のブロックの隙間の部分に群生しているのが見つけやすいでしょう。・・・これも野鳥の仕業と思われます。
葉は長さ3~4.5cm、幅0.8~2.5cmで、頂頭部が丸みを帯び葉柄は細る狭倒卵形の形となります。時として楕円形の大きな葉が出ることもあります。葉には常緑樹ならではの艶のある濃緑色で、成葉は両面無毛であるが、若葉では裏面に毛があり、時として中脈腋に毛が残っています。葉の縁にはごく低い波の様な鋸歯があります。
花は6月頃に開花し、白色の5弁花で直径約10㎜の花をたくさん集まるように咲かせます。雄しべ20個の花は、近くから観ると独特の姿を観せてくれます。中心に雌しべの花柱が突き出て、先が2裂しているように観えました。密集して咲くも、赤い実の時期と比べると地味で目立たちません。
果実は幅5~8㎜の扁球形、ナシのようなちょっとつぶれた形です。鮮やかな紅色に熟して美しい。間近で観ると果実の先に萼片が残っています。果実の色が橙色の品種も見られます。果実に長さ2.2~3㎜の種子が5個入っています。野鳥がこの実を好み、種子だけが糞の中に残って広がってゆきます。
先にトキワサンザシは、野鳥が冬に集まると書きました。実はバラ科の植物で若い果実には、青梅などバラ科の未熟な果実に含まれる毒性分の一種でアミグダリンなるものが含まれているそうです。しかし時間とともに分解されていき、冬になると野鳥が好んで食するのです。鳥の小さな体にわずかでも毒が残っっていたら・・・と思ってしまいますが、果肉だけ食して果実は噛み潰さずに糞にして外に出す野鳥にとっては、害の無い食物なのでしょう。
考えてみれば、人間だってアミグダリンのある青梅を梅干しに加工したり、梅酒にしたりと毒を抜いているのですから、心配いらないのだと思います。アミグダリンを含む食品は、アーモンド、アンズ、ビワカリン等広範囲にわたるのですが、少しなら問題ないとのこと。糞にして出してしまう鳥よりも、種子を食べてしまう人間の方が、量を気にしないといけないのかもしれません。
ピラカンサ自身も、次世代への生存戦略として、①5弁の花を密集させて咲かせて、昆虫を誘い受粉を確実にさせていること。②鮮紅色の果実を密集してつけて存在感を出していること。③前述の通り、野鳥に向けてこのように冬になったら食べに来て、完熟しておいしいよ!・・・でも、種子は糞でばらまいてと誘っているのです。
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