真美沢公園の四季 第五十三回 タラヨウ
2023年6月4日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
第五十三回 タラヨウ
郵便のはがきの葉はこのタラヨウの葉っぱから、インクが無くても字が書けて残る
英名:Tarajo holly
タラヨウは、モチノキ科の常緑樹林内でみられる高さ7~10mの雌雄異株の常緑高木で、高さ10〜20mに達するものもあります。大きくて艶のある葉と秋に稔る赤い果実を特徴です。神社やお寺周辺の森林に単木状に生育することが多く、自然林にはあまり見られないとの情報も見つけました。人為的に移植される、或いは野鳥の仕業で点々単木状に生育しているのではないかと思われているとのこと。本来は暖地の川沿いなど湿気の多い場所、谷筋の斜面などに自生する木です。寒さに弱い、根の張りが浅いなど、本州中部以西に分布するとの記述が観られましたが、近年では東北地方でも越年でき、育っています。真美沢公園でも点々と幾か所かで育っています。
タラヨウの最大の特徴は、葉に文字が掛けるという点です。戦国時代においては情報のやり取りに利用されていました。古には、弘法大師がタラヨウの葉を用いて字の勉強をした「学問の木」とされています。特に西日本では学校や寺社に植栽されることも多いとのこと。
葉に文字が掛ける…葉に書ける…から「葉書」の語源となっています。1997年には、当時の郵政省によって「郵便局の木」に制定され、全国各地の郵便局に、タラヨウの植栽が奨励されました。実際には艶のある葉の表ではなく、葉の裏に先のとがった楊枝などで傷つけるように文字を書きます。するとその部分が黒く変色し、葉が枯れたとしてもその文字は残るため、紙が貴重だった時代、重宝されていたのでしょう。以前の市民センターの講座で地元の郵便局に協力していただいて、葉書として実際に投函、届けていただいたことがあります。
タラヨウは雌雄異株の木で開花時期は5~6月で、雌木には雌花を、雄木には雄花をそれぞれに咲かせます。雌雄いずれも黄緑色で、一輪当たりの直径は6ミリほどで、花弁と萼片は4(まれに5)個で、花弁は楕円形で長さ約4mm、萼片は卵円形です。前年に出た枝の葉腋にある短枝に短い円錐花序を出し、集まって咲いているためか、そこに咲いているのでは、と目立ちます。
雄花には4本の雄しべと退化した小さな雌しべがあります。雄花には完全な雄しべ4個と退化した雌しべがあります。秋になれば雌株に実がつきますが、実際に結実するのは2年~3年に1回のこと。
果実は直径約8mmの球形の核果で、11月に赤色に熟します。花の時にまとまって咲いていたそのままで赤く熟するので遠くからも見つけることができます。核果の中には核が4個入っています。核は三角状楕円形で長さ約6mm、浅いしわが不規則に見られ、中には種子が1個入っています。
赤い実は、人だけでなく野鳥にとっても目立つ存在です。正確にはタラヨウからすれば戦略的に目立たせていて、野鳥に果実をついばんでもらい、中の種子を糞に交じって遠くに落としてもらう戦略です。では、人間にはおいしいのかというと、有毒では無いものの、エグ味が強いのでお勧めしません。ヒヨドリ、ツグミ、ムクドリ、メジロなどの鳥によく食べられます。口にしないように注意しましょう。
今や、文字を書き残す媒体は、デジタルとなって、紙に残さなくなってきています。紙以前にも様々な媒体で文字を書き残していたことは知っていますよね。日本では木簡が残されています。パピルスや羊皮紙が紀元前から使われていた媒体です。古代インドでは植物の葉を加工したものを媒体としていました。これを「貝多羅葉(ばいたらよう)」或いは略して「貝葉(ばいよう)」といって、日本のタラヨウよりもずっと大きく…長いものでした。この貝葉の葉の原材料はタラジュ(多羅樹)という木とのこと。日本の書き残せる葉の木を、その木と特徴とを結び付けて、「多羅葉」という名前になったとのことです。
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