真美沢公園の四季 第六十一回 オオバコ
2023年7月30日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
真美沢公園の四季 第六十一回 オオバコ
人の営みを利用して広がる
英名:Chinese Plantain, Arnoglossa
日本では北海道から沖縄までの全土の高地から平地までの野原や荒れ地、道端などにごく普通に自生する野草です。葉は葉と同じかそれより長い葉柄があり、形は楕円形か卵形もしくは、さじ形をしており、多くは根元からロゼット状に四方に広がり多数出ています。5~7条の葉脈が縦に平行に走り、基部に浅い切れ込みがあり、生育状態が良いと葉の縁は波打つのも特徴。 4~9月にかけて10 - 30cmの長さの花茎を出し、花は花茎の頂に長い緑色の穂に密につき、白色もしくは淡い紫色の小花が下から上に向かって順次咲く。果実は蒴果(さくか)で楕円形をしており、熟すると上半分が帽子状に取れて、中から4 - 6個の種子がこぼれます。
公園でなくても、よく見るので、どうして取り上げるのと、思われたかもしれません。あまりにも身近な野草ですね。このオオバコの生涯を通して環境を捉えての巧みさを持っているのでご紹介させてください。
オオバコの葉には3~5個の平行脈があります。植物には、養分や水分を運ぶ、人間でいえば血管のような「維管束」と呼ばれている組織があります。オオバコの場合、この維管束が太く、非常に丈夫にできていて、何回踏まれても簡単には切れたりしないようになっているのです。写真は、葉にわざと切れ目を入れてひっぱった様子。5本のうち3本は切れていないのが見てわかると思います。この丈夫さは他の植物にはない特技です。これを生かして、生育場所を確保しているのです。
そんなオオバコの特徴は、花を咲かせていく3つの時期を一本の穂で同時に見ることができることです。「雌性先熟」で、まず、個々の穂の先端からは細いブラシのような毛が1本ずつ伸びてきます。細かい毛の生えた白い糸状の雌しべが4枚のがくの間から伸びて、風で運ばれてくる花粉を捉えようとします。次に、雌しべがしおれてくると同時に4本の雄しべが伸びてきます。さらに、雄しべもしおれ、結実が始まっている様子も見せてくれます。運が良ければ、まだ開花前の蕾の状態のものも観察でき、一本の穂で4つの時期すべてを観ることができるかもしれません。
オオバコは、この種子にも特別な仕組みを持っています。種子は、乾燥しているときはサラサラの状態ですが、多糖類のコートを身にまとっています。そのため蓋が取れた状態で雨を受けたり、落ちて地表の水分を得たりすると、ゼリー状の粘液を出してべたつき、いろんなものにくっつくことができます。きっと人間の生活に近いところで生育することで、自分の持つ特色を生かし、靴の裏にくっついて、自転車のタイヤにくっついて、古くは、草鞋の裏で遠くまで運ばれて次世代へ広がっていたのでしょう。中国では、牛車や馬車の通る道に沿って生えることから「車前草」と呼ばれているとのこと。日本でも「踏み跡植物」とも呼ばれるこのオオバコ。動物散布・・・いや人間散布と断定できるでしょう。
踏まれても踏まれても折れたり切れたりしないで、踏まれることで次世代へ命をつないでいるのです。 “すごい”、と思います。
ぜひ親子で真美沢公園んに訪れて、オオバコ相撲を取ってみてください。茎が太いから勝つとも言えないので、もう一回、もう一回と夢中になってしまうかもしれません。
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