真美沢公園の四季 第六十三回 ヤマハギ
2023年8月13日
真美沢公園は、以前あった八乙女の広域の水田地帯に向けて3段のため池があった里山が連なる地域に、仙台市北部を住宅地として団地が切り開かれた中で里山とため池といったセットで残されたと思われます。最後まで残されたため池の水を利用していた水田も商業地や住宅地に変わり、里山とため池が、自然豊かな地域資産として残されています。
真美沢公園の四季 第六十三回 ヤマハギ
古より人々に愛されたハギで秋の七草のひとつ 山火事を辛抱強く待ち続ける
英名:BushClover
北海道から九州まで日本各地の日当たりのよい山野に生える落葉低木で、高さ2mになります。葉は3枚複葉で、楕円形です。秋に咲く淡い紅紫の花は、派手さのないところが万葉の時代から好まれて観賞するため、庭園や公園、川岸などに植栽され、それが広がるなど、8月花の時期に多く見つけることができます。花期は8月から10月と長く、一つの株に注目してもいつ満開なのかわからないほど。9月に実る果実は豆果で倒卵形、中に一個の種子が入っています。
ヤマハギは、万葉の時代から人々の注目が高いからでしょう。万葉集の中で一番読まれている花を詠んだ句の一番は、サクラ(桜)でもウメ(梅)でもマツ(松)でもなく、ハギなのです。その数は141首に上ります(数える基準で多少の誤差はありますが一番は変わらないそうです)。だからなのかは定かではありませんが、低木の樹木に分類されているにも関わらす、ハギが秋の七草に登場します。七草のハギは、葉ハギ類のハギと思っていませんか。本当はこのヤマハギの葉とのこと。ちなみに秋の七草は、オミナエシ カワラナデシコ キキョウ クズ ススキ フジバカマ ヤマハギの七つです。
ヤマハギの葉は互生して、3小葉からなる複葉です。クローバーのように丸みがあり、薄い葉です。頂小葉は長さ1.5~4cmの楕円形で少し大きめで、比べて丸みを持った葉が両脇に付きます。葉の縁はギザギザの無い全縁です。
雄しべは10個でうち9本は根元で合着しています。雌しべ1本とともに内側に曲がるも左右2枚の竜骨弁の内側に、二枚貝の中で守られているかのようにあります。ハナバチ類が花弁をぐいぐいとこじ開ける様に蜜を吸いに来る際に、体中に花粉まみれとなり、次の花で受粉される仕組みで次世代へ命をつないでいます。開花してしばらくすると、ハナバチらのせいと思われ雄しべ雌しべが観えてきます。
花期が長いことから満開の時期がはっきりしないまま花が散ります。散り方は花弁ごとポロポロ落ちて絨毯のように積もります。「零れ萩(こぼれはぎ)」と表現され、俳句の季語にもなっています。積もっていても樹の方に目をやるとはまだ蕾があるなど長く楽しめます。
ヤマハギは日当たりがよくて水はけのよい場所を好みます。真美沢公園でも南斜面や小径の北側に陽を受けて生長しています。日あたりが悪いと花芽が付きにくいそうです。ヤマハギはマメ科の植物と紹介しました。土中の根には、共生する根粒菌がいるため栄養分のチッ素が長く供給されるのでしょう。十分吸収して、痩せた土地でも問題なく生育します。花期の長いのはそんな援護があるからとのこと。
完熟しても果実が開かないのには理由があります。実はヤマハギは、山火事を辛抱強く待ち続ける植物でもあるそうです。山火事が起きると、ハギが芽を出す。しかし、樹高2m程度しか成長できないハギは、他の樹木に追い抜かれるので、天下を取れるのは数年間だけという。ハギは、大量の種子を地表に落とします。乾燥とともに開裂するといった仕組みをもっていません。落下したハギの種子は非常に堅いので、簡単には発芽せず地中で眠り続けるとのこと。
そんな状況下で、山火事が起きると、地中に眠っていた種子(休眠種子)にも熱が伝わり、ハギが芽を出す引き金に。実験では、ハギの種子は、80~100℃の湯に浸すと発芽が促進されることが確かめられているそうです。周りにライバルとなる植物がいなくなる状況下で、発芽し力を発揮するといった次世代戦略なのでしょう。
左:ヤマハギ、右:ミヤギノハギ ミヤギノハギは、花の長さが15mmと長くハギの中で最大の大きさ、見た目でも優美さがあります。花序が垂れ下がるのが特徴です。葉が細長いことでも区別できると思います。仙台市鶴ヶ谷の公園で植栽されている様子は下のようになります。
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