第八十回　コヤブタバコ

真夏の太陽のようなメラメラとしたフェイスとで昆虫をおびき寄せる

英名：無し

コヤブタバコは、本州〜琉球の山野の林内や丘陵地などのやや乾燥気味な林縁にふつうに生える越年草…秋に芽を出して、翌年に花を咲かせます。主茎は高さ50〜100cmになり、その主茎から斜め上方向に立ち上がるように多くの開出枝を出します。

名前は、コヤブタバコと「小」が付くので、普通に考えればヤブタバコより小さいから名が付いたと考えてしまいがちですが、実際はヤブタバコより頭花はだいぶ大きく、全体の高さはほぼ同程度となります。なぜこの名になったのかよく分からないとのこと。オオヤブタバコという山野草に比べると頭花は小さいことから、その辺りが鍵のようですがよくわからないとのことです。

頭花は、咲き始めはやや細め、咲き進んでいくうちに扁平な円柱形に成長します。ヤブタバコやガンクビソウのような先細り形にはならなりません。頭花の色は、咲き始めの若いときは雄花が目立つので鮮やかな黄色をしているが、咲き進んでいくうちに黄色は褪せて古い雌花の薄緑色へと変わってしまいます。いや、花を包む総苞の内、総苞内片が白く生長し、頭花全体でが緑白色に見えるとされています。前項で記しましたように、下向きなので頭花の正面は観られません。横からのフェイスでは白緑色に観えるのです。

正面からじっと見つめると頭花の中央の筒状花（両性花）とその周りの雌花は黄色いです。咲き終わりごろには直径15～18mm位にまで生長します。中央から周辺への色変わりの様子は、色は違いますがヒマワリの頭花のイメージでとらえても良いかと思います。先が5裂する筒状花は、雄しべ雌しべの役割を持ち、その周りの雌花とそれぞれ７ｍｍ程の花となります。

キク科に入るコヤブタバコの頭花の基部には葉状の大きな苞葉がつき、葉状の大きな総苞片が5個以上つき、さらに線状披針形の苞葉が多数やや反り返ってつきます。見た目はガンクビソウよりも激しくメラメラした真夏の太陽の様が形作られています。虫たちにもその狙いは伝わっているのでしょう。昆虫をメラメラも含めた様でおびき寄せて受粉がなされているのです。

花期の時期から持つ粘液はそのまま保たれ、果実の先端が短い嘴の形となっていて、そこから粘液がにじみ出ます。触ると意外にべたべたしています、そのべたべたで動物や鳥、或いは陽との服などにくっついて運ばれその先で落ちて生息域を広げています。粘液でくっつくひっつき虫【付着散布】で広がる戦略で生域を広げています。

ガンクビソウ　ヤブタバコ　コヤブタバコ　の比較

名前（漢字表記）： ガンクビソウ (雁首草)
花咲く季節：8月、9月、10月
分布：本州～沖縄
生活型：越年草、多年草
草丈：25〜100cm
葉の形：単葉（不分裂葉）
葉の生え方：互生
葉の縁の形：鋸歯
花のつき方：頭状花序
花の色：黄
葉の色：緑
主な生存戦略：付着散布（粘液）
識別的な特徴
花：太陽のメラメラがある。２～6枚、頭花は、基本ひとつだけ付く。頭花の形は枝もとより花先が先細るのが特徴。つまり頭花や総苞は開かない
果実：集合果と茎の見た目は、雁首と煙管の形状 

名前（漢字表記）： ヤブタバコ (薮煙草)
花咲く季節：9月、10月、11月
分布：北海道～沖縄
生活型：越年草、多年草
草丈：30〜100cm
葉の形：単葉（不分裂葉）
葉の生え方：互生
葉の縁の形：鋸歯
花のつき方：頭状花序
花の色：黄
葉の色：緑
主な生存戦略：付着散布（粘液）
識別的な特徴
茎：50cm直立した茎は、丸い節を形作り放射状に地面に沿うように横に何本も茎を伸ばす
花：節の上部、茎の葉腋ごとに、鐘形の花柄のない黄色い頭花が下向きにセットで点々とをつける
果実：葉が落ちると果実は、上部の茎に点々と間隔を置いて集合果が付いているといった印象です

名前（漢字表記）： コヤブタバコ (小藪煙草)
花咲く季節：7月、8月、9月
分布：本州～沖縄
生活型：多年草、越年草
草丈：50〜100cm
葉の形：単葉
葉の生え方：互生
葉の縁の形：鋸歯
花のつき方：頭状花序
花の色：白緑(横目から)、黄（正面から）
葉の色：緑
主な生存戦略：付着散布（粘液）
識別的な特徴
花：ことごとく真下を向くことから、人の目線からは見つけにくい。大きな総苞片と線状披針形の苞葉で真夏のメラメラ太陽を演出。総苞内片が白く、総苞外片が緑に生長し、下向きの頭花により、横アングルで白緑色の花に観える。
果実：開出枝の枝先ないし葉腋に18㎜と大きな集合果が下向きに付く